ジョージ・ソロスが唱える「再帰性理論」とはなにか?
まずはソロス氏の著書『ソロスは警告する 超バブルの崩壊=悪夢のシナリオ』(講談社、2008年)より、再帰性理論の要点となる箇所を引用してみましょう。
要するにこれは、「投資家の予想と、現実の株価の上下が、お互いに作用しあってしまうことによって、それぞれが確かな結果を生み出せなくなってしまう」ことを主張しているようです。
そしてソロス氏は、このような観察者の世界理解と世界の現実的なありようの双方向的な干渉を「再帰性」と名付けました(ちなみに再帰性理論の本質は哲学の話であり、例として株式市場が挙げられています)。
考えてみるとこれは、的を射ているようにも思えます。この理論ならば、バブルや暴落を説明し得るからです。
「投資家が上がる(下がる)と予想して買う(売る)→現実に上がる(下がる)→投資家がそれを見てまだ上がる(下がる)と予想する→また現実に上がる(下がる)」
以上のように、投資家の予想と現実が双方向的に干渉しあうことによって、バブルや暴落が起きているといえるのではないでしょうか。
もちろん、こういった理論を確実に「正しい」と証明することは難しいものです。しかしこの理論から、株価は投資家の予想と相互に干渉しあって形成されているため、実は予想も株価も不確実なものだ、と考えることができます。
そしてそれを理解しておくことは、株式投資にも大いに役立つのではないでしょうか
投資で勝つには「予想を信じない」こと
さて、投資で勝つためには、「自分の予想が絶対正しい」とは思い込まない慎重さが必要です。そしてこの再帰性理論を考えてみれば、特にそれが理解できるのではないでしょうか。
株価は投資家の予想によって形成され、投資家の予想も株価によって形成されるわけです。そして、自分だけが完全な知識を持ち、正しい株価を予想できるわけでもありません。
ですから、「これはあくまで自分の予想である」「その予想は株価の変化からも影響を受けてしまっている」という慎重な姿勢を持ち、別の観点からものを考え直してみる、投資金額を大きくしすぎない、などの対処をすることで、投資の成功確率を挙げることができるのではないでしょうか。