世界でもっとも有名な投資家の1人であるジョージ・ソロス氏は、「再帰性理論」を唱えています。「人々の意思決定はあくまでそれぞれの主観にもとづいて行われるが、その意思決定によって現実が変化し、その変化した現実によって人々がまた新たな主観を持つため、常に人々の予想や現実は不確実にならざるを得ない」といった理論です。このソロス氏の理論は投資で勝つために必要な思考法であると、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏はいいます。詳しくみていきましょう。
天才投資家ジョージ・ソロスが唱える「投資に勝つ」ための思考法【投資のプロが解説】 ※画像はイメージです/PIXTA

ジョージ・ソロスが唱える「再帰性理論」とはなにか?

まずはソロス氏の著書『ソロスは警告する 超バブルの崩壊=悪夢のシナリオ』(講談社、2008年)より、再帰性理論の要点となる箇所を引用してみましょう。

 

「人々は将来の株価を予想して株の売買をするが、株価そのものは株の売り買いをする人たちの予想によって決まってくる。予想は知識として不完全なものだ。完全な知識が得られない以上、参加者たちは主観的な判断なり偏見なりに頼ることで何らかの意思決定を行わなくてはならない。株価が人々の行動に影響を与え、人々の行動が株価に影響を与える。結果として、予想と現実とは懸け離れたものになっていく」(同書47ページより)

 

要するにこれは、「投資家の予想と、現実の株価の上下が、お互いに作用しあってしまうことによって、それぞれが確かな結果を生み出せなくなってしまう」ことを主張しているようです。

 

そしてソロス氏は、このような観察者の世界理解と世界の現実的なありようの双方向的な干渉を「再帰性」と名付けました(ちなみに再帰性理論の本質は哲学の話であり、例として株式市場が挙げられています)。

 

考えてみるとこれは、的を射ているようにも思えます。この理論ならば、バブルや暴落を説明し得るからです。

 

「投資家が上がる(下がる)と予想して買う(売る)→現実に上がる(下がる)→投資家がそれを見てまだ上がる(下がる)と予想する→また現実に上がる(下がる)」

 

以上のように、投資家の予想と現実が双方向的に干渉しあうことによって、バブルや暴落が起きているといえるのではないでしょうか。

 

もちろん、こういった理論を確実に「正しい」と証明することは難しいものです。しかしこの理論から、株価は投資家の予想と相互に干渉しあって形成されているため、実は予想も株価も不確実なものだ、と考えることができます。

 

そしてそれを理解しておくことは、株式投資にも大いに役立つのではないでしょうか

投資で勝つには「予想を信じない」こと

さて、投資で勝つためには、「自分の予想が絶対正しい」とは思い込まない慎重さが必要です。そしてこの再帰性理論を考えてみれば、特にそれが理解できるのではないでしょうか。

 

株価は投資家の予想によって形成され、投資家の予想も株価によって形成されるわけです。そして、自分だけが完全な知識を持ち、正しい株価を予想できるわけでもありません。

 

ですから、「これはあくまで自分の予想である」「その予想は株価の変化からも影響を受けてしまっている」という慎重な姿勢を持ち、別の観点からものを考え直してみる、投資金額を大きくしすぎない、などの対処をすることで、投資の成功確率を挙げることができるのではないでしょうか。