2022年上半期首都圏の新築マンションは、販売戸数は減ったものの、平均価格は前年同時期よりも上昇しました。価格上昇を牽引しているのが、駅チカ・高価格帯のタワマンです。いまだ人気が衰えぬタワマンですが、売却を決断する人も増えているようです。みていきましょう。
タワマンに住む「年収1,400万円」のパワーカップル…勝ち組夫婦から一転、自己破産の危機 (※写真はイメージです/PIXTA)

ひと握りのパワーカップル…タワマン購入に潜む「破産リスク」

ニッセイ基礎研究所が発表したレポートによると、夫婦ともに年収が700万円以上の世帯は、2016年には全国で25万世帯で全世帯の約0.5%、共働き世帯の1.8%だとしています。このような勝ち組パワーカップルが億ションを買う際、利用するのは多くがペアローンです。

 

では、仮に世帯年収1,400万円のパワーカップルが、1億円のタワマン購入を考えたとしましょう。住宅ローンで無理のない返済額の目安とされる返済負担率30%で計算すると、毎月の返済額は35万円となります。金融機関の審査金利3.0%、返済期間30年でシミュレーションをおこなったところ、毎月の返済額35万円の範囲内での借入可能額は、およそ8,300万円となりました。自己資金を入れると、十分購入可能といえるでしょう。

 

しかし、ペアローンを組んでタワマンを購入したパワーカップルを待ち受ける「収入」のリスクには注意が必要です。

 

タワマン購入は、あくまでも夫婦ともに収入があることが前提。仮に夫婦ともに40歳のパワーカップルだとしたら、30年間、収入が途絶えることなく70歳まで共働きを続けることが条件になります。30年間、夫婦ともに安定的な収入が得られる、というのは少々非現実的です。

 

また、仮に退職金で繰り上げ返済を行うとすると、適用金利1.0%で借入可能額8,300万円を借りている場合、60歳時点での借入残高はおよそ3,000万円。不可能ではありませんが、老後の資金が大幅な減少は避けられません。

 

病気や親の介護などで収入が途絶えることも考えられますし、このコロナ禍で減給や賞与なしとなった会社員が多くいたように、パワーカップルにも収入減のリスクは常につきまといます。

 

さらには離婚という事態も想定しておく必要があります。夫婦でローンを組んでいるのですから、万が一、夫婦が別の道を歩むことになったとしたら……揉めに揉めることは火を見るよりも明らかです。

 

現状を維持できれば億ションの購入も可能なパワーカップル……ただし、上記に挙げたような「万が一」の事態がひとつでも起きた場合、とたんにペアローンが破綻。物件の売却や、最悪の場合「自己破産」の可能性も。不動産の営業に乗せられることなく、リスクを考慮したうえで冷静な判断が求められます。