同意が得られない、お金が足りない…修繕したくてもできない、タワマン入居者の苦悩
前出のような修繕にまつわるリスクが大きいとされているのが、高層マンション、いわゆるタワマンです。明確な定義はありませんが、高さ60メートル、階数にして20階以上のマンションのことを指すことが多く、2003年からリーマンショック前の2009年までの間、東京都心を中心に一気に増えました。この7年間で、棟数にして500棟、戸数にして12万戸を超えます。これらのタワーマンションは、2033年以降に続々と築30年を超える、築古マンションになるわけです。
タワーマンションは低層階の価格と高層階の価格が大きく違うことは誰もが知るところ。低層階は一般の会社員なども多く、一方「億ション」となることが多い高層階に住むのは、経営者などの富裕層。これほど属性の異なる人たちがひとつの建物のなかに暮らしているわけですから、利害を一致させるのは難しいことは想像するに容易いでしょう。
さらに修繕積立金そのものに問題がある場合も。国土交通省では、修繕積立金不足を発生させないよう、必要とされるだろう金額をあらかじめ均等に積み立てていくことを推奨しています。しかし販売戦略上、毎月の支払額を安く見せるために、当初の修繕積立金を抑えるケースは珍しいことではありません。このような場合でも、1回目の修繕では積立金でカバーすることは織り込まれていることがほとんど。しかし2回目、3回目の修繕については、当初の金額では賄いきれず、徐々に毎月の支払額が増えていく……という事態に。
毎月の修繕費を増やしていくことで対応できればまだましで、なかには、修繕計画を具体化させるタイミングで「修繕費が足りない!」ということが判明し、必要な修繕が行えないケースも頻発しているといいます。そのような事態に陥るリスクが、2003年から2009年に急増したタワマンのなかにも多いのではないかされています。
タワマンの魅力といえば、その資産価値。駅前の好立地、豪華な設備などにより、周辺の物件よりも高値で売買されることが多く、将来売却することも念頭に購入する人も多くいます。しかしひとたび修繕が不完全ともなれば、その資産価値の暴落は避けられません。タワマンの購入者のなかには「予算を超えるけど、一生に一度の買い物だから……」と、思いきって購入を決意した会社員も多いことでしょう。しかしタワマンが内包するリスクによって、その思いははかなく散ってしまう可能性があるのです。
さらにタワマンともなれば規模が大きいだけに、機能不全ともなれば、そのインパクトは周辺にも及びます。もはやタワマンの入居者だけの問題だけではないのです。
もちろん、このような可能性は、タワマンに限らず、どのようなマンションにもありうること。一般層にとってマンション購入は、人生において一番大きな買い物です。後悔のないよう、安すぎる修繕積立金には要注意。1回目に限らず、2回目、3回目……と長期的にどのような管理体制を想定しているのかも含めて、比較・検討する必要があるのです。