本記事では、ニッセイ基礎研究所の篠原拓也氏が、ニュースなどでよく耳にする「富士山O個分」などという例示について考察していきます。
「富士山O個分」 実感できる?-「~O個分」 や 「~のO分の1」 の上手な例示 (写真はイメージです/PIXTA)

東京ドームは容量の単位でもある

東京ドームは、ある巨大なものの容量を表すときにも用いられる。東京ドームの運営会社のホームページによると、東京ドームの容積は124万立方メートル、つまり124万キロリットルとされている。

 

よく知られている話だが、東京ドームは、Googleの検索サイト上で、体積の単位として用いられている。例えば、検索ワード入力部分に「1000000キロリットル 東京ドーム」と入力して検索すると、

 

「1000000キロリットル = 0.806451613東京ドーム (数式 体積の値を1.24e+6で除算)」

 

といった、“答え”が得られる。

 

東京ドームという単位は、例えば、ビールの消費量に用いられる。キリンビール株式会社の公表資料によると、2020年の世界のビール総消費量は約1億7749.9万キロリットル。これは、東京ドーム約143杯分に相当する。

 

このうち、日本は441.6万キロリットルで、約3.6杯分に相当する。1年間に日本全体で東京ドーム約3.6杯分のビールを飲みほしているわけだが、一般の人にはピンとこないかもしれない。

 

また、ごみの量にも、東京ドームが用いられる。環境省の公表内容によると、令和元年度のごみ総排出量は4167万トン。ごみの比重を1立方メートルあたり0.3トンとして容量に換算すると、1億3890万立方メートル。これは、東京ドーム約112杯分に相当する。

 

東京ドーム約112杯分もの大量のごみをイメージすると、誰でも陰鬱な気分になってくるはずだ。ごみを減らす取り組みがいかに重要か、が実感できるだろう。

 レモン1個 = ビタミンC 20ミリグラムとされている

つづいて、食べ物に含まれる成分の量を表す方法を見ていこう。

 

よく清涼飲料水などでみかけるのは、「レモンO個分のビタミンC」という、うたい文句だ。ペットボトルなどのパッケージにレモンの絵柄が描かれていると、それを見ただけで口の中に酸っぱさを感じてしまうこともある。

 

実は、レモン果実の個数によってビタミンCの量を表示することについて、かつては「ビタミンC含有菓子の品質表示ガイドライン」があった。しかし、このガイドラインは2008年に廃止されており、代わって社団法人全国清涼飲料工業会と社団法人日本果汁協会が、連名で基準を示した。それによると、「清涼飲料水に添加されたビタミンC量をレモン果実の個数により表示する場合には、レモン果実1個当たり『20㎎換算』を基準とすることが適切である」とのことだ。

 

この基準値の20ミリグラムは、レモン1個の重量を120グラムとして、レモン果汁(全果に対する果汁分30%)100グラム当たりのビタミンCが50ミリグラムであるとして、次のように算定されている。

 

120グラム(レモン1個) × 30%(果汁分) × 50ミリグラム(ビタミンC)/100グラム(果汁)≒20ミリグラム

 

実は、可食部100グラム当たりで、レモン果汁(50ミリグラム)よりも多くのビタミンCを含む食品には、アセロラ果実飲料[10%果汁入り飲料](120ミリグラム)、キウイフルーツ[緑肉種](71ミリグラム)、赤ピーマン[果実、生 (別名パプリカ)](170ミリグラム)などいろいろある。(「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(文部科学省)より) ただ、ビタミンCといえばレモンというイメージが定着していて、レモンの個数での表示がよく用いられるようだ。