本記事では、ニッセイ基礎研究所の久我尚子氏が、夫婦共に年収700万円以上の世帯であるパワーカップルの最新の動向についてレポートします。
パワーカップル世帯の動向-コロナ禍でも増加、夫の年収1500万円以上でも妻の過半数は就労 (写真はイメージです/PIXTA)

はじめに~新型コロナ禍で収入が減少する労働者もいる中でパワーカップルは?

夫婦共働き世帯が増える中で2017年に同名のレポート*1を発信した。その後も「女性の活躍推進」政策等の効果によって、共働き世帯数は全体で見ても子育て世帯でも増加している(図表1・2)

 

新型コロナ禍で厳しい状況に対峙する労働者もいるが、妻が夫並みに稼ぐ「パワーカップル世帯」は現在、どのような状況にあるのだろうか。本稿では、総務省「労働力調査」などを用いて現状を確認する。なお、過去に述べた通り、パワーカップルには明確な定義はなく、共働き夫婦の合計年収(2千万円以上など)や年収に加えて金融資産の量も考慮したもの、あるいは政治家や事業家など影響力のある夫婦を指すこともあるようだが、本稿では、これまでと同様に所得税の税率区分や、一定程度の裁量権を持つ年収水準であることなどを考慮し、夫婦共に年収700万円以上の世帯と定義する。

 

[図表1、2]共働き世帯数と専業主婦世帯数/18歳未満の子のいる世帯の父母の就業状況

 

*1:久我尚子「パワーカップル世帯の動向(1)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2017/8/28)など。

 

世帯の所得分布の全体像~2千万円以上の高所得世帯は1.3%、50・60歳代や大都市で多い

パワーカップル世帯の状況を捉える前に、まず、世帯の所得について全体像を確認したい。

 

厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」によると、総世帯(5,179万世帯)の年間平均所得は552万円、中央値は437万円である。

 

高所得世帯に注目すると、1,200~1,500万円未満は全体の3.8%(198万世帯)、1,500~2,000万円未満は2.1%(109万世帯)、2,000万円以上は1.3%(65万世帯)を占める(図表3)。なお、この10年ほど、いずれも横ばいで推移している。

 

これらの高所得世帯を属性別に見ると、世帯主の年齢別には、1,200~1,500万円未満は50歳代や40歳代が、1,500万円以上は50歳代や60歳代が多く、いずれも上位2つの年代で全体の約6割を占める(図表4)

 

また、地域別には2,000万円以上の世帯は南関東(33.6%)や東海(20.8%)で、都市規模別には大都市(政令指定都市と東京23区、36.8%)や人口15万人以上の市(26.4%)で多い(図表略)。

 

[図表3、4]所得金額階級別に見た世帯数の割合(2019年)/世帯主の年齢別に見た所得階級分布(2019年)