変化する「美容医療」のイメージ
以前は「美容整形」といわれると、どこか恥ずべき、隠すべきこととしてネガティブな印象がありました。
しかしSNSの波及に伴い、近年の美容医療はより皆さまにとって身近なものになっています。特に大手の美容外科を中心に、インスタグラムなどで積極的に症例の紹介を行ったり宣伝したりなどSNSを活用することで、以前のようなネガティブな印象は薄まり、とりわけ若者のあいだで美容医療が急速に普及しました。
それでも、いまも美容医療を否定的にとらえる方もいらっしゃるかと思います。「医療は病気の人に提供するものであり、健康な人へ提供するものではない」と考えていらっしゃるかもしれません。
しかし現代の医療は治療や延命のみが目的なのではなく、「いかに質のいい生き方をするか」まで発展していると考えます。なかでも美容医療は、見た目のコンプレックスを改善させることで患者さまに自信と生きる意欲を与える重要な分野です。
本記事では、そんな「人生の質を高める」観点から、加齢に対する美容医療について考えていきます。
美容医療において重要な「アンチエイジング治療」
美容医療というと、「若い人をきれいな顔に変える」ことをイメージしている方が多いのではないでしょうか。
もちろんそれも美容医療のひとつですが、実は加齢に伴う変化に対する「アンチエイジング治療」も重要な分野です。たとえば、加齢に伴うしみをレーザーで取る、下がってしまって見えにくくなった瞼(まぶた)を上げ見えやすくする、たるんだ顔の皮膚を引き上げるなどがあります。
下がった瞼、しみを改善した70代女性・Aさんの変化
筆者が以前勤務していた総合病院では、形成外科とは別に美容医療の施術もしており、ある日70代の女性Aさんが、瞼が下がり見えにくくなったことを主訴に来院されました。
Aさんは、加齢に伴い瞼の筋肉が緩むことで瞼が下がる「眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)」という機能障害でした。形成外科で眼瞼下垂症と診断された場合は保険適応になることもあり、Aさんのケースでは保険診療にて眼瞼下垂症手術を施行しました。
術後検診の際、Aさんはそれまで見せることのなかった笑顔で、「世界が明るく見えるようになった」と満足されました。
そこで、今度は長年の畑仕事で日光を浴びてできた「しみ」の治療のご相談がありました。しみに対するレーザー治療は保険適応外ですので美容医療となりますが、Aさんの希望で今度はしみを取るレーザー治療を行いました。
数ヵ月後の検診では無事しみもなくなり、「いままでもう歳だからと諦めていたのですが、おかげさまで若返り、最近では畑仕事だけじゃなく外で買い物をするのも楽しくて仕方がありません」とおっしゃっていただきました。
とてもうれしく思ったと同時に、美容医療の重要性を知ったよい経験でした。
超高齢社会における「美容医療」の重要性
Aさんが「なるべく人に会わないよう、外出は最低限にして生活していた」と語っていたように、皮膚のたるみやしみなどは加齢によるものだから仕方ないと捉える一方で、実は外に出ると他の人に見られて恥ずかしいと思っている方も多いのではないでしょうか。
医学の発展とともに延命治療が進み平均寿命が延びたいま、今後は中高年層がより質の良い人生を送るためにどのような医療を提供できるかにも重点が置かれると思われます。「もうこんな歳だから、いまから美容医療なんて…」と考えている方もいらっしゃると思いますが、美容医療に年齢は関係ありません。
SNSを中心に急速に発展した近年の美容医療は、どこか「美容医療は若者向き」というイメージを強くしてはいないだろうかと危惧しています。SNSを知らない高齢者の方々はいまの美容医療から取り残されてはいないでしょうか。
“美を追求する”美容医療はもちろん必要ですが、これからの超高齢社会にあっては“加齢に対し若々しさを維持する”美容医療も同じくらい重要です。
「人生を豊かにする医療」として、美容医療の役割をより多くの方に知っていただけたら幸いです。
新井 清信
銀座マイアミ美容外科
日本専門医機構 形成外科領域専門医
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