パワハラ、セクハラ、モラハラ…「カスハラ」だけが増加傾向
厚生労働省では、職場のパワーハラスメントとして、以下の通り定義しています。
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
職場=事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます。
労働者=正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する全ての労働者をいいます。
①=業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者とされる者(以下「行為者」という。)に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指します。
②=社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指します。
③=当該言動により、労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
出所:厚生労働省ホームページより
ハラスメントにはセクシャル・ハラスメント(セクハラ)やパワー・ハラスメント(パワハラ)、モラル・ハラスメント(モラハラ)、マタニティ・ハラスメント(マタハラ)、スモーク・ハラスメント(スモハラ)など、様々なものがありますが、上司や同僚からのものばかりではありません。顧客から受けるハラスメントもあり、カスタマー・ハラスメント、カスハラとして問題視されています。
クレームとカスハラ(迷惑行為)はしばしば混同されがちですが、クレームはサービスの向上や品質の改善などを目的にしたものが多く、企業にとっても改善の材料になるものです。一方カスハラは「嫌がらせ」「酔っ払い」などの理不尽なものであり、クレームとは大きく性質が異なります。
厚生労働省『令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査』によると、過去3年間のハラスメント相談件数に占めるカスハラの割合は19.5%。セクハラやパワハラなど、ほかのハラスメントの件数は横ばいから減少傾向にあるのに対し、カスハラだけは増加の傾向(増えているの割合に対し、減少しているの割合が多い)にありました。
その内容については、「長時間の拘束や同じ内容を繰り返すなど過度のクレーム」が最も多く59.5%。「名誉棄損・侮辱・ひどい暴言」55.7%、「著しく不当な要求(金品の要求、土下座の強要等)」27.7%、「脅迫」17.3%、「暴行・障害」11.1%と続きます。
またカスハラというと接客業だけ、と思いがちですが、カスハラのうち27.7%が「取引先等の他社の従業員・役員」が行ったといいます。カスハラは、すべての企業で起こりうるハラスメントだといえるでしょう。
度重なるカスハラに対する心身への影響として、最も多いのが「怒りや不満、不安を感じた」。以下「仕事に対する意欲の減退」「職場でのコミュニケーション減少」「不眠」と続きます。