建物と入居者の高齢化が一度に進む、新築分譲マンション
そんな新築分譲マンション、東京都では特に増加の一途を辿っています。
地域経済分析システム(RESAS:リーサス)によると、2013年、戸建て住宅168.6万戸に対して、マンションなどの共同住宅は475.9万戸。2021年は、戸建て住宅は178.9万戸に対して、マンションなどは553.3万戸。戸建てが10万戸ほど増加しているのに対して、マンションなどの増加数は、戸建ての8倍ほどにもなっています。
日本は人口減少期にあり、これから住宅が余る時代になるといわれています。しかし新品を好むのが日本人の特徴。マンションにおいても「中古よりも新築」という傾向が強いようです。
増え続ける分譲マンション。ただ最近、問題視されているのが、老朽化したマンションの増加。大規模な修繕、または建て替えや取り壊しが必要な水準に関わらず、打つ手がなく、荒廃したままのマンションが増え続けているのです。
その要因といわれているのが、入居者の高齢化。新築分譲マンションの場合、入居者は構成含めて似たような家族が多くなります。それから数十年後、入居者は高齢者ばかり、というパターンになりがちです。国土交通省の調査によると、マンションの寿命(建て替えのタイミング)は平均37年。つまり入居から37年後、老朽化したマンションは、大規模な修繕、または取り壊し、さらには建て替える、という選択に迫られます。
前出の調査とおり、取得者の平均年齢でマンションを買ったとしたら、70代後半から80代。所得の面では年金に頼るところが大きく、修繕費をプラスαで求められても、なかなか首を縦にふることは難しいでしょう。取り壊し・建て替えとなると、一時的な住居が必要になりますが、高齢者が家を借りるのはハードルが高く、「先はそれほど長くないから、今のままでいい」となりがち。
区分所有法によって規律されているマンションは、修繕や建て替えなど行う場合、高い同意要件が必要です。取り壊しであれば、所有者全員の同意が必要ですし、建て替えでも5分の4の同意が求められます。その基準を満たすのは、なかなか難儀です。
気に入って購入したマンションが、数十年後、入居者の同意が得られず、荒廃していく。修繕したくても修繕できず、引っ越したくても引っ越せず、八方塞がりのまま、そこが終の棲家になる……もしかしたら、気に入って購入したマンションでは、そのような結末が待っているかもしれません。検討しているマンションには長期的な修繕計画が盛り込まれているか、それが現実的なものなのか、しっかりと確認・検討することが大切です。