心房細動を起こしやすい人の「特徴」
心房細動の原因はさまざまですが、なかでも「加齢」は大きな誘因となっています。実際、心房細動の患者は高齢者によくみられます。
発症の誘因は「加齢」「飲酒」「心疾患」
どのような人が心房細動になりやすいのかを調べた調査に、とても興味深いものがあります。
Framingham研究(※1)と久山町第2集団研究(※2)と呼ばれており、アメリカのフラミンガムと、日本の福岡県久山町で全住民を登録し、まったく医療介入を行わずに心房細動の発症率を調べました。
※1 Benjamin EJ, Levy D, Vaziri SM, et al. Independent risk factors for atrial fibrillation in a population-based cohort. The Framingham Heart Study. JAMA 1994; 271: 840-844.
※2 藤島正敏. 循環器学の進歩:高齢者の循環器疾患. 脳血管障害のリスクファクターとしての心疾患. 循環器医 1998; 6:19-26
すると、日米における特異的な差はなく、どちらの国でも心房細動を発症しやすかったのは「高齢の人」「飲酒の習慣がある人」「心疾患(弁膜症、心筋症、心筋梗塞、鬱血性心不全など)の既往症がある人」でした。
これらの要因を持つ人は、心房細動の発症率が高くなります。たとえば「飲酒」でいうと、[図表2]のように、ビール500ml、日本酒1合などをアルコール1単位」とし、毎日3単位以上摂取している人は、飲酒しない人に比べて、心房細動を3倍発症しやすいことがわかっています(※)。
(※)Sano F, et al. Circ J. 2014; 78: 955-61
「高血圧」の場合発症率が1.4倍
高血圧も心房細動を発症する大きな要因のひとつです。
1995年に行われた調査によると、高血圧のある人はない人に比べ、1.4倍心房細動になりやすいことがわかっています(※)。これは、心疾患や飲酒歴など、心房細動を引き起こす他の危険因子を補正し、純粋に高血圧だけのリスクを調べたものです。
※ The natural history of atrial fibrillation: incidence, risk factors, and prognosis in the Manitoba Follow-Up Study. Am J Med. 1995 May
1.4倍ときくと、「それほど高くない」という印象があるかもしれません。しかし、高血圧は脳梗塞や心筋梗塞とも密接な関係があるため、高血圧に気をつけることで、心筋梗塞などを介した心房細動も予防することができます。
「睡眠時無呼吸症候群」「甲状腺機能亢進症」も高リスク
意外と見落としがちなのが、睡眠時無呼吸症候群も心房細動の要因になりうるということです。
睡眠時無呼吸症候群になると睡眠の質が落ちるので、日中に眠気や倦怠感に見舞われます。無呼吸により血液中の酸素濃度が低下するため、心臓は一生懸命全身に血液を送り、酸素を届けようとします。それにより心臓に負担がかかり、心房細動を発症しやすくなるのです。
研究により、睡眠時無呼吸症候群の人はその他の人に比べ、心房細動を4倍発症しやすいことがわかっています(※)。
(※)Am J Respir Crit Care Med. 2006;173(8):910
また、甲状腺機能亢進症の人も心房細動のリスクが上昇します。
甲状腺ホルモンが異常に分泌されることにより代謝が亢進し、動悸、発汗、手の震え、やせなどの症状が出現します。約10~20%の人が心房細動を合併します。