売ることを考えず、株を買い増して積み立てていくという投資法のなかで、「ドル・コスト平均法」という手法が用いられることがあります。平均的な価格で株を買い集めることができる「ドル・コスト平均法」ですが、注意すべき落とし穴があると株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏はいいます。詳しくみていきましょう。
ドル・コスト平均法による「株の積立投資」に潜む落し穴【プロトレーダーが解説】 ※画像はイメージです/PIXTA

「ドル・コスト平均法」とは

年間120万円の余剰資金があるので、ある銘柄の株を120万円分買うとします。

 

「買おうと決めたときに120万円分買う」という選択肢もありますが、もしそのとき株価が割高だった場合、購入後に値下がりする確率が高くなってしまいます。これはつまり「値上がりする確率が低い」ということでもあります。

 

しかし、毎月10万円分ずつ12ヵ月間に分けて買えば、どうでしょうか?

 

株価は常に上下しているため、12ヵ月のあいだには割高なときも割安なときもあります。割高なときは買える株数が少なくなり、割安なときは買える株数が多くなります。ですから、12回に分けて買うことで、その間の平均的な株価で株を買い集めることができるわけです。

 

このように、一度に購入せず、均等額ずつ定期的に継続して投資をする方法が、「ドル・コスト平均法」です。1つの銘柄の株を積み立てていってもよいですし、投資信託に積み立てをしていく人もいます。

ドル・コスト平均法の「落とし穴」

ところが、そんなドル・コスト平均法には落とし穴もあります。

 

前述の、120万円を12ヵ月(12回)に分けて買うという例で考えてみます。懸念すべきは、「この12ヵ月間すべて株価が割高だった場合」です。

 

株価は毎日上下しますが、月単位、年単位でも上下します。ある年に1000円だった株価が、1年後には500円になっていることもあります。そして割高だった年に購入をしていれば、いくらその後ドル・コスト平均法による投資を続けても、なかなか利益が出ないでしょう。

 

そもそも、投資信託を含めて同一銘柄に投資をするドル・コスト平均法では、銘柄選択が非常に重要です。長期的に値下がりし続ける銘柄を選んでドル・コスト平均法を用いると、資産は減る一方になってしまうのです。

 

また、さきほどの例で考えてみると、最初に120万円を一気に投資し、その直後に株価急上昇の局面があれば、12回に分割するよりも当然利益は大きくなります。

 

このように、分割して買うことで大きな利益を得るチャンスを逸してしまう可能性があるという点も、ドル・コスト平均法の落とし穴といえます。