病院で行われる4つの主な心電図検査
病院で行う心電図検査は、主に以下の4つの方法があります。不整脈だけでなく、心筋梗塞、狭心症、心肥大などの検査にも用いられます。
もっとも一般的な心電図検査「12誘導心電図」
12誘導心電図は健康診断や人間ドックで検査した人も多いでしょう。
12誘導心電図とは、その名のとおり心臓に流れる電流を12方向から記録したもののことをいいます。もっとも一般的に行われる心電図検査で、両手首と両足首に4個のクリップ電極を、胸部に6個の吸盤電極をつけて、心臓の筋肉が興奮する時に生じる電気的活動を詳細に記録します。
この検査では、心臓の電気的な活動をさまざまな方向から記録します。もし、不整脈が発生した瞬間に心電図が記録できれば、その不整脈の種類はもちろんのこと、心臓のどの辺りに起源があるかを推定することもできます。また、不整脈のほかにも、心筋梗塞や心筋症、狭心症などを診断することもできます。
しかし、弱点としては、記録する時間が30秒から1分間、長くても3分くらいですから、その時間内に不整脈が起こらなければ、確定診断をつけることが難しいということが挙げられます。
24時間にわたって記録する「ホルター心電図」
12誘導心電図の弱点を補うべく使われるのが、ホルター心電図です。これは、携帯用の小型心電計を使って24時間、心電図を記録するもの。検査中の心電図はすべて記録されるため、一発の不整脈も見逃すことはなく、極めて詳細に不整脈の診断が可能です。
しかし、この心電図検査は誘導数が2方向と少ないため、12誘導心電図ならば可能な不整脈の発生起源などの判断はできません。また、24時間記録しても不整脈が現れない場合も多く、実際に「1ヵ月に1回や、1年に数回程度しか不整脈が現れない」という人も少なくありません。
そういう場合は、ホルター心電図でも不整脈を捕らえることが難しくなります。
心臓電気生理学的検査(EPS)
もっと詳細に不整脈の状況を調べるときには、心臓電気生理学的検査(EPS)が用いられます。
これは、数ミリ径の細い管(カテーテル)を、足の付け根や頸の静脈から、心臓に向かって数本挿入する検査方法。カテーテルの先端には小さな電極が付いていて、電気信号を心臓に与えることにより、不整脈を誘発して診断する方法です。心拍数が速くなる、頻脈性の不整脈の診断に特に有効です。
12誘導心電図やホルター心電図では、体表に電極をつけるため、心臓の内部で起きている電気の伝達経路の異常や不整脈のメカニズムまで、把握することはできません。しかしこの心臓電気生理学検査なら、不整脈中の心臓内部の電気的興奮経路を詳細に理解することができ、診断ができたら、そのまま治療も可能です。
欠点は入院をしなければならないということと、頻度は極めて少ないものの合併症などのリスクが伴うことが挙げられます。
最長3年間、心臓を24時間モニタリングする「植込み型心電計」
もっと詳細に不整脈の様子を記録したいという人に推奨するのが、「植込み型心電計」です。これは、極小の心電計を前胸部の皮膚の下に埋め込むもので、最長3年間、心臓を24時間モニタリングすることができます。
心電計の植込みは局所麻酔を使用し、約5分で終了します。身体的な負担も少なく、日帰り入院での処置が可能なのも、この植込み型心電計のメリットです。
特にこの植込み型心電計を推奨するのは、失神を起こしたことのある患者さんです。原因不明の失神を繰り返す場合には、失神が心臓の病気に由来するのか、あるいは、心臓以外に原因があるのかを判断するうえで、非常に有用です。
また、遠隔モニタリングが可能で、心電図記録は自動で病院に送信され、迅速で的確な診断が可能になり、速やかに治療へ進むことができるのも、植込み型心電計のメリットです。
欠点は特にありませんが、あえていうなら植込みや除去のために手術が必要なことでしょう。