年金だけでは老後の資金は足りず、自助努力が必要といわれていますが、努力をしても「老後の資金が足りない」という人もいます。年金だけでは生活できず、貯蓄もない……そんな老後についてみていきます。
平均年金14万円だが…低年金で貯蓄ゼロの「貧困高齢者」生活保護も受けられず

年金だけでは暮らせない場合、「生活保護」の選択肢はあるが…

年金だけでは生活できない、貯蓄もない……そんな時はどうすればいいのでしょうか。選択肢の1つが生活保護です。厚生労働省『令和2年度被保護者調査』によると、生活保護を受けている被保護世帯は161万6884世帯、被保護人員は202万6730人。そのうち65歳以上は105万4,581万人になります。

 

生活保護は最低限の生活を送ることを保証するもの。支給される生活保護費は最低生活費から収入を差し引いた金額です。最低生活費は、国によって定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営むため」に必要な金額であり、世帯人数や居住地などでも異なります。最低生活費と収入と比較し、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。

 

たとえば東京都世田谷区在住の65歳以上の単身者であれば、月に127,920円、65歳以上夫婦であれば月183,920円が目安です。高齢者の場合、この目安額から年金の受給額を引いた金額が生活保護費として受給されることになります。

 

年金受取額の分布から考えると、もっと多くの高齢者が生活保護の対象になりそうですが、生活が苦しければ生活保護を受けられるかといえばそうではありません。

 

まず生活保護を受けるためには「働けない」状態でなければいけません。就労によって収入を得ることが困難であることが客観的に判断されます。70歳定年に向けて動き出している昨今。病気やケガをして働けない状態でない限り、「高齢者=働けない」とは判断されないでしょう。

 

また保有している資産がないことも条件。株や不動産などの金融資産はもちろん、預貯金などもあってはいけません。持ち家はあってもいいとされていますが、もし住宅ローンが残っている場合は、生活保護は受けにくくなります。

 

さらに生活保護のほかにさまざまなセーフティーネットがあり、それらを利用しても生活が苦しいのか、さらに扶養義務者はいないのか、も判断基準です。逆をいえば、ほかの制度を活用できたり、扶養義務者がいたりすると、生活保護のハードルは高くなります。

 

このような条件にすべて当てはまり、初めて生活保護を受けられるようになります。しかし最近は元気な高齢者も多く、「生活に困っているならまずは働いてください」という判断になる可能性が高いといえます。高齢になって生活に困ったら生活保護がある……そう考えているなら、簡単ではないことは知っておくべきでしょう。