教員を志し大学入学も、実際に教員になるのは6割
文部科学省が公表した「国立の教員養成大学・学部及び国私立の教職大学院の令和3年3月卒業者及び修了者の就職状況等」によると、全国の教員養成大学の2023年度卒業者は1万1,448人。 そのうち、教員になった人は6,752人で、教員就職率は59.0%、大学院等への進学者と保育士への就職者を除いた教員就職率は65.2%でした。
対象となる44大学のうち、最も教員就職率が高いのは「上越教育大学」で87.9%。続く「大分大学」は79.3%。「上越教育大学」は就職率の高さで定評があり、評判通りの数値となっています。
またトップと44位では40ポイント近くの差があり、教員養成大学といっても、卒業生が教員を志すかどうかには大きな差があることがわかります。
【全国教員養成大学「教員就職率」ランキング】
1位「上越教育」87.9%
2位「大分」79.3%
3位「鳴門教育」77.4%
4位「福岡教育」77.2%
5位「長崎」76.4%
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40位「千葉」56.6%
41位「静岡」56.4%
42位「岩手」53.5%
43位「横浜国立」49.3%
44位「埼玉」47.9%
出所:文部科学省より
※2023年度卒業生対象
教員就職率は、教員採用が厳しかった、1990年代後半から2000年代初頭に大きく下落。1999年には32%にまで落ち込みました。近年は50%後半から60%前半の間で推移しています。
一方、教員採用選考試験の倍率は下落傾向にあり、2020年度実施(2021年採用)小学校の競争率(採用倍率)は全国平均で2.6倍。この倍率は、教師の質を保てないレベルといわれており、大きな問題となっています。
現在の日本は、教員志望にとっては有利な状況。それにも関わらず、教員養成大学に通っていながらも多くの卒業生が教員以外の道を選択しているのはなぜなのでしょうか。
そこにはやはり、昨今いわれている教員を取り巻く、劣悪な労働環境が一因だと考えられます。文部科学省による『教員勤務実態調査』(2016年)では、公立小学校で3割、中学校で6割の教師が過労死ラインである月80時間を超える時間外労働を行っていました。このコロナ禍では、感染状況によってイレギュラーな対応の連続で、疲弊の声が教育現場から聞こえてきます。そのような教育現場を、実習の際に目の当たりにし、教員という選択肢を辞める学生も多いといいます。