会社員をやめて農業を始める、いわゆる「脱サラ農業」が増えています。そこで気になるのが、農業で食べていけるのか。農業の所得事情をみていきましょう。
会社を辞めて農業を始めました…「脱サラ農家」驚きの年収額 (※写真はイメージです/PIXTA)

農家の平均年収はいくらくらいか?

日本の農業を取り巻く環境は、厳しいものがあります。現在、農業従事者の平均年齢は68歳ほど。年々上昇を続けるなか、次世代を担う農業者の育成は急務であり、政府もさまざまな支援、取り組みがされています。

 

たとえば「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」。就農前の研修を後押しする資金を支援する「準備型」と、就農直後の経営確立を支援する資金を支援する「経営開始型」の2種類があります。「脱サラ農業」を志すにあたっての一番の悩みどころをサポートしてくれる助成金です。

 

ほかにも全国新規就農相談センターの相談窓口など、就農に関してさまざまな相談、サポートが受けられます。

 

しかし、「脱サラ農業」を志すにあたり、一番の興味は「農業の年収って、どれくらい?」ということではないでしょうか。農林水産省『平成30年 農業経営統計調査 営農類型別経営統計(個別経営)』でみていきましょう。

 

まず水田作経営の場合、平均年収は437万1,000円。そのうち、農業所得は55万6,000円、農業外所得が174万5,000円、年金等が209万4,000円。多くが農業以外ので収入を得ています。

 

さらに農業所得が総所得の50%以上を占め、1年間に60日以上農業に従事しているなどの「主業農家」の平均年収は637万2,000円、そのうち農業所得は510万9,000円。全体の平均値よりも農業所得が9倍ほど多く、この規模になれば「主な生業は農業です」という働き方ができるというわけです。

 

続いて畑作経営の場合をみていきましょう。平均年収は562万2,000円。そのうち農業所得は286万4,000円、農業外所得が135万9,000円、年金等が136万2,000円。さらに主業農家はの平均年収は868万3,000円で、そのうち農業所得は741万6,000円。稲作に比べて畑作のほうが農業による収入は多い傾向にあります。

 

日本の会社員の平均給与は、433万円(国税庁『民間給与実態統計調査』)。主業で農業に取り組めば、会社員以上の給与も夢ではない……少々意外な事実でしょうか。ただし農業といえば自然相手の仕事(違うケースもありますが)。収入を安定させることは、会社員よりも難しいことは、予め知っておくことでしょう。

 

「脱サラ農業」で成功するためには、3つのことが必要とされています。ひとつは本当に農業をやっていく「覚悟」があるか。2つめが技術や経営を学ぶための「勤勉さ」、3つめは周囲の農家と上手くやっていくための「コミュニケーション力」。会社員に求められるものと、そう変わりはありません。