現役世代の保険料増も限界…国は自助努力に期待するしかない
厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金の平均年金額は老齢年金で月額5万6,358円、厚生年金保険(第1号)の平均年金額は老齢年金で月額14万6,145円。自営業だった人は月に5万円強、会社員や公務員だった人は月に14万円強、というのが相場。そこから来年度は前年比0.4%が減額となります。
そもそも日本の公的年金は、保険料を積み立て、将来、高齢者になった時に受け取るものではなく、現役世代の保険料を元に、そのときの高齢者に支給されるもの。しかし少子高齢化で現役世代が減ると、現役世代の保険料は上がり続けてしまいます。そのために、保険料は一定水準で固定する代わりに、年金支給額を抑える仕組みになっています。前出のマクロ経済スライドはそのような仕組みのひとつです。
しかしすべての高齢者が悠々自適に暮らしているわけではなく、高齢になっても生活費のために働き続けている人も多数。しかしコロナ禍で仕事が減ったり、解雇となったりして収入減に直面したケースも珍しくありません。月に数百円の減額が痛手という高齢者もいるのです。
将来的に年金支給の財源を確保するためにも、年金支給額の目減りは今後も進むと言われています。また国民年金の保険料は2004年の制度改正により段階的に引き上げられてきましたが、2017年度に上限に達し引き上げが完了。保険料の引き上げはすでに限界と言われています。さらに65歳からの年金支給を維持していると将来的に現役世代が犠牲となることから、支給年齢の引き上げも現実となるのは確定的とされています。
公的年金の制度がこの先も維持されていくかはあまりに不透明で、現在の高齢者のように、「年金が足りない分は貯蓄を取り崩す」といった、年金をメインに考える老後は想定外と考えておくことが得策という意見も。実際、国も自助努力による老後資産の作り方を推進していますし、「国民一人ひとりの努力に期待するしかない」が本音だといえるでしょう。
現役世代は時間を味方にして、できるだけ長く働き、年金に頼らず生きていくを見据えて、資産形成に励むしかなさそうです。