「公務員の安定神話」というものがありました。公務員であれば老後も安定して暮らしていけるというものです。しかし聞こえてくるのは「公務員も老後は苦しい」という嘆き。人事院の調査から、公務員の老後の暮らしぶりをみていきましょう。
安定神話、すでに崩壊…公務員「定年後は毎月赤字で生活苦」の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

定年後の公務員「生活を維持するために働かなければならない」が8割超え

公務員の定年後の生活について、人事院『令和2年退職公務員生活状況調査』でみていきましょう。

 

公務員が定年を迎えたあと、悠々自適な引退生活を送っているのは、1割程度。9割が何かしら仕事を続けています。その理由は「生活維持」。働かないとやっていけいない、というのが現実です。

 

■定年退職時の就労希望

「定年退職後も働きたいと思った」86.6%

※「現在て収入を伴う仕事に就いている」89.6%

 

■働きたいと思った理由(複数回答)

「日々の生計維持のために必要」85.0%

 

■何歳まで働き続けたいと思ったか

「65歳まで」36.3%

「70歳まで」8.1%

「年齢に関係なく、働けるうちはいつまでも働きたい」21.2%

 

出所:人事院『令和2年退職公務員生活状況調査』より

 

ボーナスを含まない世帯の収入は平均収入月額は37.7万円、平均支出額は37.6万円。しかし働いていない世帯では支出が収入を 11.3 万円ほど上回っています。

 

そして現状の家計の状況をたずねたところ、無職世帯のほうが「ゆとりがある」の回答は多く21%。働かなくてもやっていける、という見通しがたったからこそ、完全に引退した人が多いことがうかがえます。また勤労の有無を問わず。4割は毎月赤字という状況です。さらに勤労世帯で16%、無職世帯で27%が「生活が苦しい」と回答しています。

 

■世帯の家計の状況(勤労世帯)

「ゆとりがある」17.5%

「ゆとりはないが、赤字でもない」40.3%

「赤字が出る」40.2%

※「どうやりくりしても、常に赤字が出て生活が苦しい」16.7%

 

■世帯の家計の状況(無職世帯)

「ゆとりがある」21.0%

「ゆとりはないが、赤字でもない」35.1%

「赤字が出る」43.0%

※「どうやりくりしても、常に赤字が出て生活が苦しい」27.6%

 

出所:人事院『令和2年退職公務員生活状況調査』より

 

公務員の定年後の生活をみてきましたが、会社員世帯と同様、定年後の生活は決して楽とはいえない状況がみえてきました。もちろん、生活水準は人それぞれ。現役時代の水準を維持するには苦労する、という人もいれば、生活レベルを落としても苦労している人もいて、一概に「公務員の老後は大変」とはいえないでしょう。ただ4割が赤字、ということを考えると、公務員であっても早めの資産形成は必須だといえそうです。