子どもが不登校になったら、保護者は愕然としてしまうかもしれません。しかし、対応の仕方によっては、子どもが期待に応えられない自分を責め、ますます学校に行けなくなる、という悪循環を生む可能性があるのです。今回は、不登校の子どもと親がどのように関わっていくべきか、フリースクール経営者が解説していきます。 ※本記事は、自らも不登校児の親としてこの問題に対峙し、フリースクールを設立した、ほしな和生氏の著書『子どもが不登校になったら』から一部を抜粋・編集したものです。
子どもが不登校になってしまったら…「チャンスと思って」の真意 (※画像はイメージです/PIXTA)

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保護者からの悩み相談…フリースクール経営者の答えは

悩み相談:「子どもの出席日数が足りないと、学校の成績にも影響を与えてしまうので、なんとか学校に行かせたいのですが」

 

こう思う保護者の方、実はとても多いです。でも、でも。よく考えてみてくださいね。一体何のために出席日数や学校の成績を気にする必要がありますか?

 

まず、小学生の場合。出席日数は全く気にしなくても卒業できます。全然大丈夫です。義務教育ですから。どんなに勉強の成績が悪くても、みんな進級して一緒に卒業しますよね。そして、小学校時代の出席日数が今後の人生に何か影響があるか、というと何ら影響しません。つまり、学校に行かなくても、みんなと同じように卒業できますし、特にその先困ることもありません。

公立高校を受験する場合、内申点が合否に影響するが…

中学生も然り。同じく義務教育です。ただ、公立高校を受験する場合は、中学校がつける内申点が合否に影響します。ですので、この場合は多少出席日数を気にする必要はあります(関西地区の情報です)。

 

しかしながら今の時代、公立高校にこだわる必要はさほどないと私は思っています。現在ほとんどの都道府県では、私立高校の授業料が無償です(所得制限はありますが)。

 

経済的に私立高校に行けない、という場合はほぼないと思いますし、むしろ私立高校の方が公立よりかなりいろいろな学習環境が整備され、進んでいます。オンライン授業なども、既に実施しているところが多いです。

 

私の子どもは二人が私立高校に進学しましたが、とても良い学校環境でした。いじめなどもありませんでした(発覚時はいじめた子が即退学となります)。親子共に大変満足しています。そして私立高校の受験では、中学校の内申点は一切関係ありません(関西地区の情報です)。

「子どもの不登校」がきっかけでフリースクールを設立

さて、ここでは子どもの不登校を振り返ってみた私の感想を述べてみたいと思います。

 

私は、子どもが不登校になったことで、その渦中にいる親子の苦しみ、大変さについて、身をもって知ることができました。その結果、同じ立場にある多くの不登校に悩む親子を一人でも多く救いたいと強く思い、長年勤めた会社を辞めて、今運営している不登校の子どもが通えるフリースクールを立ち上げました。

 

子どもが不登校にならなければ、決して歩むことのなかった道です。今は不登校の子どもたちと日々楽しく過ごしています。それもこれも、私の子どもが不登校になったおかげ。子どもからは、本当に多くのことを学ばせてもらいました。この子でなければ知らなかった世界を見せてもらいました。感謝、感謝です。

 

子どもを実際に育ててみないと、その大変さは千分の一ミリもわかりません。それと同じく、子どもが不登校になった人にしか、わからないことがたくさんあります。

ママ友「勉強、高校進学、どうすんの!?」

子どもが学校に行かなくなった当時、私はママ友に随分いろんなことを言われました。

 

「早く学校に行かせた方がいい」

 

とか、

 

「勉強、高校進学、どうすんの!?」

 

という、同情にあふれた、でも絶望的な視線。本当に、とてつもなく孤独でした。ただ一人だけ、同じく子どもが不登校になった経験のある旧友からは、「仕事は辞めたらあかんで」と、随分励ましてもらいました。心底ありがたかったです。同じ立場にある人に励まされて、初めて私はその言葉が心に届きました。その旧友にも感謝、感謝です。

子どもの不登校が「ある意味チャンス」の真意

子どもがいざ不登校になると、特にお父さんがその状況を受け入れられない、というケースが多々あります。夫婦の意見が食い違い、更に子どもを追い詰めてしまうことも。しかし私の夫は全てを私に任せてくれ、一切口出しをしませんでした。これも本当にありがたかったです。肝心なところだけ、助けてくれました。感謝です。

 

不登校の子どもにきょうだいがいると、随分その子は救われるような気がしています。私の子どもは他にもきょうだいたちがいましたので、不登校の渦中でも、一緒にゲームをするなど、みんなで仲良く遊んでくれました。学校に行っていないことについては、

 

「なんで行ってないのん!?」

 

と疑問に思うこともあったみたいですが、私が正直に説明することで、納得してくれたようです。いつも通り学校に行っていない子どもに接して、一緒に遊んでくれたきょうだいたちにも感謝。

 

今こうして振り返ると、結果的には子どもが不登校になったおかげで、私は多くのことに気づき、助けられ、感謝することができました。

 

子どもの不登校は、ある意味チャンスです。その子は本当に何が好きで、何が得意で、何をしていると楽しいのか。これを見つけるための有り余る時間が得られるのです。これさえ見つかれば、その子は幸せに生きていけると私は確信しています。どうか、不登校になったことを前向きに捉えて、他の子にはない、その子だけの光輝くものを見つけて、大切に育んであげて欲しいと思います。

 

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ほしな 和生

大阪府立大学卒業。 某大企業勤務時代に小学校への出前授業を一から企画、教材開発し、講師として教壇に立つ。 延べ1万人の子どもたちに授業を実施。 出前授業は「キッズデザイン賞」、「おおさか環境賞」大賞受賞。 その後独立してフリースクールを立ち上げ、学校に行っていない子どもとその保護者のサポート支援に従事。 趣味はバンド活動、動植物飼育、日本酒、旅行など。