レバレッジを活用した株式ファンドは資産形成に向かない
米国株式のリスクを軽視している投資家が増えていることは、レバレッジを活用した米国株式ファンド(【図表2】青棒)への資金流入が足元、急増していることからもうかがえる(【図表1】ではブル・ベア型のファンドとして「その他」に分類している)。
以前は資金流入が100億円を超える月がほとんどなかったが、この9月、10月には200億円に迫る資金流入があった。さらに11月は新設ファンドの影響もあり340億円にまで流入金額が膨らんだ。
シミュレーションを行い、先ほどの株価指数と同様にリーマン・ショック時の最大下落率を算出すると、2倍の場合(赤棒)で80%以上、さらに3倍の場合(紫棒)は95%であった【図表4】。
日々、先物等のポジションが見直されている仕組みになっているため、最大下落率が元の指数の値の2倍、3倍になるわけではない。また、基本的に為替ヘッジがかけられており、為替の影響を受けにくい。それでも当時からこのようなファンドがあったならば、かなり厳しい状況になっていたと推測される。
さらに、これだけ大きく毀損してしまうとその後の回復も遅くなる。ここでナスダック100を例に2007年11月以降のリーマン・ショック時の下落とその後の回復局面をみた【図表5】。
指数自体(黄線)は2011年初に、3年2カ月で元の水準を回復している。それに対して2倍の場合(赤線)は2012年4月であり、約4年半かかった。3倍の場合(紫線)に至っては、2013年11月であり6年かかった。このシミュレーションではコスト面を考慮していない。レバレッジを活用しているほど信託報酬が高く、さらに為替ヘッジのコスト等もあるため、実際には回復がさらに後連れしただろう。
このように株式は元々、価格変動が大きく、レバレッジをかけるとさらに大きくなる。レバレッジを活用した株式ファンドは株価が上昇しているときは良いが、サブプライム、リーマン・ショックのようなことが起きると悲惨な状況になる。
そのような商品をバイアンドホールドする場合、暴落等のショックが来ないことを祈りながら保有し続けることになる。それゆえにレバレッジを活用した株式ファンドは長期投資・長期のバイアンドホールドが基本となる堅実な資産形成には向かず、あくまでも短期の売買向けの投機的な商品といえるだろう。
現在、基本的に投資期間が5年以内の一般NISAでは購入可能なものがあり、実際に一般NISAで購入している方もいるようである。2024年の新制度移行後には購入不可になる見込みであるが、制度の目的から考えて、適切な対応であると思われる。
なお、外国株式ファンドの場合、約定日が注文日の翌営業日以降になるため、注文タイミングと売買タイミングにタイムラグが生じてしまう。レバレッジを活用した米国株式ファンドが短期売買向けといっても、そもそも株価変動に応じた機動的な売買自体が困難である。機動的な売買が可能で以前から人気がある国内株式のレバレッジETFと比べても、より扱いが難しい商品であるといえよう。
ハイテク系のテーマ型ファンドの一部が好調
11月に高パフォーマンスであったファンドをみると、一部のハイテク系のテーマ型ファンドが好調であった【図表6】。
前山 裕亮
ニッセイ基礎研究所