会社員が給与を増やしていく方法のひとつが、出世して昇給を勝ち取ること。なかには、出世の先に「会社役員」になる人もいるでしょう。会社役員の報酬、いくらくらいなのでしょうか。国税庁の調査からみていきます。
まさか新卒の給与以下…役員報酬300万円以下、50代取締役の悲惨【ケーススタディ】 (※写真はイメージです/PIXTA)

平均報酬「657万1,000円」だが…役員3人に1人は報酬300万円以下

このように法律で定められている役員。従業員とは法的に立場が異なります。役員は雇用する側であり「使用人」、従業員は雇用される側であり「労働者」です。

 

また従業員が労働の対価として雇用者から定期的に支払われる「給与」。一方、役員が任務遂行の対価として支払われるのが「報酬」です。

 

給与は役職などで体系的に決まり、労働基準法で定められた時間を超えた労働に対しては、時間外手当などを支給しなければなりません。報酬は定款、または株主総会によって決められます。給与よりも高い水準であっても、会社の業績が悪い時は大幅カットされることもあります。また給与は例外はあるものの全額損金算入ができますが、役員報酬を損金算入するためには条件があります。

 

役員は働く時間が決まっていないのが一般的。一定の報酬で長時間働くこともあります。そのため役員は原則、社会保険の対象となります。一方で従業員は労働時間によって加入対象の有無が決まります。

 

色々と違いがある役員と従業員。とりあえず、役員は特別だということがわかったでしょう。では、給与と報酬、どれくらいの違いがあるのでしょうか。

 

国税庁『令和2年分民間給与実態統計調査』によると、正社員(男女計、平均年齢44.0歳、平均勤続年数12.7歳)の平均給与は495万7,000円。それに対して、役員(男女計、平均年齢57.7歳、平均勤続年数20.3年)の平均報酬は657万1,000円。その差、約160万円。多いか、少ないか、判断が分かれる微妙な差です。

 

さらに役員報酬の分布をみてみます。2000万円以上が4.13%と、役員20人に1人の割合。1000万円以上は16.78%で、役員6人に1人の割合。ため息を出るくらいの高給を得ている役員がいる一方で、500万円以下が55.72%と過半数。300万円以下が34.78%と、役員の3人に1人は新卒社員以下の報酬です。重責ばかり背負わされて……、そんな会社役員が多いのも事実です。

 

【役員報酬の分布】

「100万円以下」8.17%

「200万円以下」14.15%

「300万円以下」12.46%

「400万円以下」10.03%

「500万円以下」10.91%

「600万円以下」9.15%

「700万円以下」5.00%

「800万円以下」5.80%

「900万円以下」4.34%

「1,000万円以下」3.21%

「1,500万円以下」8.76%

「2,000万円以下」3.89%

「2,500万円以下」1.73%

「2,500万円超」2.40%

 

国税庁『令和2年分民間給与実態統計調査』

 

もちろん社外取締役のように、ほかから報酬を得ているケースも多くあります。また資本金2,000万円未満企業の役員報酬平均は567万8,000円ですが、資本金1億円以上の企業になると1,463万8,000円、資本金10億円以上企業になると1,712万3,000円と、会社規模によって大きな格差が生じています。「会社役員」といっても、もはや富裕層という水準の人もいれば、驚くほどの薄給で重責だけを背負っている人もいたりと、さまざまです。