「勉強に興味が湧かず留年した東大生」が…
現在外務省に勤務する大谷壮矢さんのお母さんは、まさにそんな親の姿を象徴する一例。
壮矢さんは、東大に入学しますが、入学後、学部を決めるための勉強に興味が湧かず、留年してしまいます。しかし、この「留年」が人生を変えたのです。
※ 東大には、1年生から2年生前期までの成績で、3年生から進む学部を決める制度がある。
留年中、海外で環境保全のボランティア活動に参加。この経験によって帰国後、当初の予定とは違う「地球惑星環境学科」に進学する決断ができました。この学科は、就職に不利というイメージから人気がないそうですが、壮矢さんは「はじめて、やりたい勉強だと思えた」と言います。
その後、大学院時代に、海外のフィールドワークの現場で、多くの日本人の国際協力の足跡を目の当たりにしたことから自分もその世界で働きたいと思うようになります。こうして「やりたいこと」をみつけた壮矢さんは外務省に入省したのです。
理系の院卒は異色だそうですが、本人は首尾一貫しており、回り道をした分、引き出しが増え、今の仕事に生かされているといいます。まさにプランド・ハップンスタンスです。
一般とは違うルートで、やりたいことを見つけていった壮矢さん。それを裏でサポートしてくれたのがお母さんでした。壮矢さんはお母さんについて「怖かったけど、小さいときから自分のやりたいという気持ちを尊重してくれた」と言います。
結果的に今の道を選ぶターニングポイントになった留年をしたときも「どこかで一度挫折の経験をしたほうがいい」と励まされたそうです。回り道をさせないようにする親が多い中、安心して試行錯誤ができたからこそ、今にたどり着けたのでしょう。
自己決定をサポートすることで、子どもは親の想像以上の成長を遂げてくのです。
中曽根 陽子
マザークエスト 代表/教育ジャーナリスト