基本給は増えても「手取り額」が増えないと意味がない
有効性に懐疑的な意見も目立つ「賃上げ税制」ですが、それでも給与が上がらない状況からすると、期待せずにはいられないでしょう。
ただ「基本給があがっても、それだけでは意味がない」という意見も多く聞かれます。「手取りが増えないと仕方がないだろ!」というのです。
たしかに、給与額に微笑んでいたけど、実際に振り込まれた金額に愕然としたことは、会社員であればあるでしょう。
給与から天引きされるのは、まず所得税や住民税といった税金。さらに「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」、さらに40歳以上であれば「介護保険料」といった社会保険料。
額面30万円であれば、なんだかんだいって、独身であれば手取りは23万円ほど。結婚して配偶者を扶養していれば23.4万円、さらに子どもが1人いれば23.8万円、子どもが2人なら24.2万円ほどになります。
さらに総務省『家計調査』で勤労世帯の実収入と非消費支出(所得税や住民税などの直絶税や公的年金保険料や健康保険料、介護保険料などの社会保険料)の割合の変化を見ていくと、2000年は15.70%だったのが、2020年は18.19%と、この20年ほどで約2.5%も負担が増えています(関連記事:『年々負担が重くなる…家計における「税金+社会保険料」率の推移』)。
非消費支出の増加の要因は、社会保険料の増加によるところが大きいと考えられ、高齢化に伴い社会保険料の負担は年々増えています。全国健康保険協会『保険料率の変遷』によると、2000年代に「健康保険料」は8.20%から10.00%に増加。さらに2000年からは介護保険料も加わり、会社員が給与から天引きされる金額は年々増加しているのが実情です。
高齢化を止めることは難しく、負担増は仕方がないかもしれません。給与増を目指す政策だけでは、私たちの暮らしは楽にならない……。そんな事実に、めまいを感じてしまう、それが日本の実情です。