第49回衆議院選挙は、自民党が国会を安定的に運営できる「絶対安定多数」を上回りました。今後は、岸田首相が就任当時から口にしている「所得」をどのように増やしていくかが焦点になってきますが、「日本人の給与は増えない」など、すでにネガティブな意見が目立ちます。なぜなのか、考えていきましょう。
岸田首相「賃上げ税制強化で所得増」を目指すも「日本人の給料は増えそうにない」という虚しい現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

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この30年で「日本人の基本給」はどうなった?

衆議院選挙で自民党が安定多数の議席を確保し、いよいよ岸田文雄首相が就任当初からいっていた「所得倍増」(「平均所得や所得総額の単なる倍増を企図したものではない」と、報道が先行している感は否めませんが……)に向けて動き出しました。年末の令和4年度税制改正協議は「所得拡大促進税制」、通称「賃上げ税制」が焦点になるといわれています。

 

賃上げ税制、その名の通り、企業が支払う賃金に対して優遇処置を行うというもの。自民・公明両党は、衆議院選の公約で推進を掲げていました。現行制度では、中小企業が支払う給与総額が前年比1.5%以上増えた場合、その増加分の15%を法人税から差し引くとしています。その減税率を引上げて、企業に一層の賃上げを促していこうというのです。

 

ただ専門家のなかには懐疑的な意見も多いようです。というのも、この賃上げ税制、導入は平成25年(2013年)と、いまから8年も前の話。「日本の平均賃金は30年近く横ばいで、目立った効果は出ていないではないか!」というのです。たしかに、企業側からすれば、一度基本給を上げてしまえば下げることはしにくく、一時的な税制優遇策ではなかなか賃上げに踏み切るのは難しいでしょう。

 

厚生労働省『賃金構造基本統計調査』で基本給(所定内給与)の推移を見ていくと、1990年の基本給の平均は25万4,700円。バブル崩壊、不良債権問題と、日本経済は苦境に立たされる中でも、基本給はわずかながらも前年比プラスを記録していきますが、2002年に前年比1.0%減とマイナスを記録。その後リーマンショックもあり、2000年代はほぼ「基本給減の時代」だったといえます(関連記事:『【図表でみる】30年(1990年~2019年)日本人の基本給の推移』)。

 

再び基本給が前年を上回るようになったのは、2014年。アベノミクス効果で、日本経済が上向きになりかけていたころからは、決して高くはありませんが、前年比プラスが続いています。

 

賃上げ税制が創設された2013年と2019年で比べてみると、基本給は4.06%増。また30年前と比較すると120%増。前出の通り、横ばいとまではいいませんが、たとえばアメリカのここ30年のインフレ率は2~3%台で推移していることを鑑みると、「日本人の給与はあがっていない」ばかりか「日本人の給与は減り続けている」といわれても仕方のない水準だといえそうです。