夕方から夜に元気になり、夜更かしの悪循環
起立性調節障害の診断基準として、まずは以下の症状のうち3つを満たした場合に、起立性調節障害が疑われます。
・立っていると気持ちが悪くなる。ひどくなると倒れる
・入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
・少し動くと動悸あるいは息切れがする
・朝、なかなか起きられず、午前中調子が悪い
・顔色が悪い
・食欲不振
・臍仙痛(さいせんつう:腹痛)をときどき訴える
・倦怠あるいは疲れやすい
・頭痛
これらの症状は、暑い時期の夏には悪化する傾向があります。また立位や座位で強くなり、臥位(がい:寝ている状態)になると軽減する傾向があります。
1日の中では、朝、昼は交感神経のスイッチが入らないために元気はありませんが、夕方から夜になると元気になり気分も良くなるため、パソコンやスマートフォンの使用、深夜のテレビ視聴などで過ごすことも多いといいます。
この結果、ブルーライトの刺激などで夜に目がさえて寝られず不眠症となるため、起床時刻がさらに遅くなり、昼夜逆転生活になることもあります。
これらの判断基準を満たして、起立性調節障害が疑われた場合には、朝のつらい症状を再現する「新起立試験」が検討されます。この検査は、10分臥位となり、その後10分程度立位となり、血圧、脈拍の変動を確認します。同時に、他の疾患(炎症性疾患、甲状腺機能異常、貧血、不整脈など)の可能性がないか、血液、心電図、レントゲン検査などを行うことが一般的です。
「新起立試験」により、起立性調節障害と判定された場合、以下に分類されます。
(1)起立直後性低血圧(軽症型、重症型)
(2)体位性頻脈症候群
(3)血管迷走神経性失神
(4)遷延性起立性低血圧
同時に、検査結果と日常生活状況の問診内容から重症度を判定し、学校生活や心身症としての心理社会的な関与がどれだけあるかを評価します。
怠け癖ではなく、病気だという理解が不可欠
まず重要であることは、「決して怠けているわけではなく、体のコントロールがうまくいかないという病気(自律神経失調症の1つ)」という認識と理解が必要です。
ですから、両親が子どもの症状を「怠け癖」、ゲームやスマホへの没頭による夜更かし、学校が嫌いという逃避行動と考えて、叱責したり朝に無理やり起こしたりして、親子関係が悪化することがないように、さらに根性論で乗り切ることができない病気であるということをしっかりと説明しています。
日常生活における対応としては、朝はひとまず1日のリズムを作るために声かけとカーテンや窓をあけて日光や外気をあびさせることです。
起きる方法としては、座位や臥位からでは、1分程度かけて頭を下げてゆっくりと立ち上がることです。
血圧低下が原因となるため水分は1日2リットルと多めにとり、塩分も12g程度で多めにとることです。
具体的にはラーメンやうどんでは汁まで飲む、お寿司では醤油を多くかけるなどの方法となります。夜間の睡眠を促すため、調子の良い時間帯に散歩などの運動をおこなって身体的活動を行い、就寝1時間前からはスマートフォンやパソコンの使用を避けます。
学校に行くことに心理的負担を感じているため、診断書を発行して保健室と連携を取り、午後からの登校や保健室登校などを認めてもらうような体制作りを依頼します。近年では、本疾患に対しての理解が高まっております。
合わせて、薬物治療を併用していきます。
昇圧剤(リズミックなど)の内服、めまいなどの症状に対しては苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)など、症状にあわせた漢方も有用です。
本疾患の予後ですが軽症であれば3~6ヵ月、重症例となると回復まで数年かかる場合もあります。また、成人後にも類似症状が残存する場合もあります。
武井 智昭
院長
高座渋谷つばさクリニック