IMF、国際通貨基金は2021年の日本のGDP(実質国内総生産)の成長率見通しを、前回7月の予想から0.4ポイント下方修正し、プラス2.4%としました。長引く緊急事態宣言の影響を織り込んだ結果ですが、世界的に見て、日本の経済回復の遅れが指摘されています。しかし遅れているのは不況からの回復だけでしょうか。GDPから日本の現状を見ていきましょう。
GDP「韓国」の背中遠のく…世界から遅れる「日本」の厳し過ぎる惨状 (※写真はイメージです/PIXTA)

GDP「韓国が日本を抜いた」といわれているが…

GDPについては、よく「日本が韓国に抜かれた」というワードをよく目にします。名目GDPでは、「日本」は世界第3位で「韓国」は10位。1人当たり名目GDPでは、「日本」は世界第24位で、「韓国」は第29位。成長著しい「韓国」が迫ってはいますが、まだ「日本」が上回っています。

 

果たして「韓国」が上回っている、というのは……それは「購買力平価GDP」のことです。購買力平価(PPP)とは、モノやサービスの価格を基準にした為替レートのことで、ある国の通貨建ての資金の購買力が、他国でも等しくなるように、為替レートは決定されるという考え方です。各国の物価水準の差を修正し、より実質的な比較ができるとされています。たとえば日本では110円、米国では1ドルで買えるものがあれば、1ドル=110円であれば購入力平価は成立しているといえます。

 

では購買力平価GDPで世界を見ていくと、トップは「中国」となり、第2位が「米国」、第3位が「インド」となり、「日本」は世界第4位。「韓国」は世界第14位となります(関連記事:『【最新】世界「GDP」ランキング…名目GDP/購買力平価GDP』)。

 

【「購買力平価GDP」世界トップ10】

1位「中国」24,191,300百万米ドル

2位「米国」20,893,750百万米ドル

3位「インド」8,974,740百万米ドル

4位「日本」5,312,300百万米ドル

5位「ドイツ」4,536,520百万米ドル

6位「ロシア」4,100,480百万米ドル

7位「インドネシア」3,301,910百万米ドル

8位「ブラジル」3,153,150百万米ドル

9位「フランス」3,016,880百万米ドル

10位「イギリス」2,961,890百万米ドル

 

出所:2020年IMF

 

「中国」が「米国」を抜いたのは2016年。その差は徐々に広がりつつあります。そして「日本」と「インド」が逆転したのは2009年。コロナ禍以前の2019年まで、その差は徐々に広がっていました。

 

そして国民1人当たりの購買力平価GDPを見ていくと、トップは「ルクセンブルク」、続くのが「シンガポール」、第3位は「カタール」。「米国」は世界第8位です。そして「韓国」は世界第28位、「日本」は世界33位と、「韓国」が「日本」を上回っています。

 

「韓国」が「日本」を上回ったのは2018年。その差は徐々に広がりつつあります。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

【「1人当たり購買力平価GDP」世界トップ10】

1位「ルクセンブルク」117,984米ドル

2位「シンガポール」98,512米ドル

3位「カタール」96,607米ドル

4位「アイルランド」95,994米ドル

5位「スイス」73,246米ドル

6位「アラブ首長国連邦」71,139米ドル

7位「ノルウェー」65,841米ドル

8位「米国」63,358米ドル

9位「ブルネイ」62,306米ドル

10位「サンマリノ」60,490米ドル

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28位「韓国」44750米ドル

33位「日本」42212米ドル

 

出所:2020年IMF

 

このような状況になったのは、「韓国」が成長したというよりも「日本」が勝手に落ちてきた、という表現のほうが正しいのかもしれません。

 

国税庁『民間給与実態統計調査』によると、会社員の平均給与は433万円。2年連続の減少となりましたが、その水準は30年前、バブル期のころと同じ。30年間、日本は世界の成長から取り残されている……そんな事情を象徴するかのような数値です。

 

今回の衆議院選では、与党も野党も「分配なくして成長なし」と声高らかに訴えていますが、選挙の結果がどうあれ、「日本」は「韓国」の背中が遠のくのかどうかの瀬戸際にいる、ということは事実です。