中学受験を控える家庭にとって、12月は落ち着かない時期です。番狂わせが多いと言われる中学受験において、合格率をアップさせるための「12月の過ごし方」について、灘中合格者数16年連続1位を誇る浜学園の橋本憲一塾長が解説します。※本連載は橋本憲一氏の著書『灘中に合格する子は学力のほかに何を持っているのか: ワンランク上の志望校に受かるための能力と習慣』(ポプラ社)より、一部を抜粋・再編集したものです。
中学受験生、本番まであとわずか…合格率をアップさせる「12月の過ごし方」【名門塾塾長が解説】

受験生の「12月」の過ごし方3.イメージトレーニング

みっつ目は、子どもの過去の「勉強における成功体験」と、その「成功理由」を書きだして、本人の目に留まる場所に貼るということです。

 

勉強における成功体験というのは、例えば苦手だった理科の問題が解けたとか、はじめて算数で90点をとったときのテスト、模擬試験で正答率が低いのに解けた問題や、模擬試験で上位に入った成績表。そういう、本人の自信になる、勉強におけるポジティブな記憶があるものならば、なんでもかまいません。

 

加えて、本人に「そのとき、なぜいい点数がとれたのか」、「なぜ、その難問が解けたのか」など成功した理由を書いてもらいます。それを子どもが普段過ごす部屋の最も目に留まる壁などに貼るのです。

 

このようなものをなぜ貼らせるかというと、入試前の準備という意味もありますが、小学生にとって一番の効果は「イメージトレーニング」だからです。

 

中学入試では番狂わせというのがよく起こります。

 

合格確実と思われていた子どもが残念な結果に終わったり、「まさかこの子が!」という予想外の大逆転が起きたりします。

 

私が長年、中学受験に携わって感じるのは、小学生というのは試験時に、自分の普段の調子が保てればだいたい合格するということです。浜学園でいえば、D判定ではちょっと厳しいものの、B判定・C判定くらいの子どもまでは十分合格するチャンスがあります。

 

しかし、例えば国語の大問1問の文章が全然わからなかったとか、理科で嫌いな単元が出たとか、あるひとつの問題でつまずいてしまうと、本来の実力を発揮できないまま、ズルズルと失点を重ねてしまうことがあります。

 

同じ受験生でも、中3生や高3生の受験生に比べて、小6生は試験中に自分を立て直すということがまだうまくできません。小学生は常にプラス思考ではあるのですが、ちょっと逆境に立つと、人生経験が少ない分、打たれ弱いのです。

 

しかし、そのままでは、自分の不得手な問題がテストの最初のほうに何問か出ると、自分の実力を出し切れずに焦って自分が正解できる問題まで間違えてしまい、合格できるチャンスがあった入試という勝負に勝てないということにもなりかねません。

 

「試験中に自分がわからない問題に出くわしたら、チェックをして次の問題にいったらいい」

 

自分でこういう判断ができる強さも持たなければいけないのです。

画期的な「成功体験」貼り紙作戦…小学生への効果は?

そこで、強い自分のイメージを刷り込ませるための道具が「貼り紙」なのです。

 

自分が過去にとった「いい点数」や「成績」を壁などに貼って毎日の家庭学習でわからない問題が出てきたり、集中して考えられなかったりしたときに眺めることによって、「同じ小6生相手に、これだけの成績を残せている自分なのだから負けるわけがない!」「その自分がわからない問題なら、ほかのライバルもほとんどわからないだろうから、この問題はあとに回そう」という強い自信を持ち、模試や本番の入学試験中にそのことを「思いだすための習慣」をつくっているのです。

 

小学生というのは、習慣が身につきやすい時期です。彼らは貼り紙作戦をスタートしてから、およそ1〜2週間で自分がポジティブになる方法を身につけます。

 

以上がみっつのポイントですが、子どもの12月の過ごし方として重要なキーワードをひとつ挙げるとすれば、「習慣を守る」ということになると思います。

 

なぜなら入試本番では、「いつも通り」に力を発揮できる子どもが一番強いからです。

 

12月はその最後の仕上げに「自分を信じる習慣」を身につけて、翌月の入試本番をポジティブな状態で迎えてほしいと思います。

 

 

橋本 憲一

浜学園

学園長

 

灘中合格者を多数輩出!名門塾の学園長が中学受験ノウハウを語る
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