株を借りて売る「空売り」では、権利付き最終日(権利確定日)にその株を返済していない場合、「配当落ち調整金」というコストを支払う必要があります。また権利付き最終日の直後は株価が下落しやすい傾向にあります。単純に考えると空売りで利益を出すことができそうですが、果たして、そんなに上手くいくものでしょうか。
「権利確定日に空売りすれば儲かる」は本当か?【投資のプロが解説】 ※画像はイメージです/PIXTA

権利落ち後の空売り決済も確実に利益が出るわけではない

さて、一般的に、権利付き最終日を過ぎた「権利落ち」後には株価が下がりやすい傾向があります。これは、配当を目当てとしていた投資家が、配当の権利が得られる権利付き最終日を過ぎてすぐに、株を売るケースが多いからです。

 

そしてそのような傾向を利用して、空売りで利益を出す方法を考えることができます。高い確率で株価が下がるのですから、権利付き最終日前に高値で株を空売りし、権利落ち後にそれが下落したら買い戻して返済するのです。そうすれば、差額が利益となるでしょう。

 

しかし、実はその方法でも、そう確実に利益が出せるわけではありません。

 

その理由の1つは、権利落ち後に「必ず」株価が下がるわけではないからです。あくまでそれは傾向であって、例外もあるのです。

 

またもう1つの理由は、先ほどの配当落ち調整金の存在です。仮に、空売りした株が権利落ち後に下落してそこで買い戻してその分の利益を得たとしても、後に権利落ち調整金をそれ以上支払うならば、その利益は実質ゼロ以下になってしまうからです。

 

これらの理由から、この方法を実践することにも注意が必要であると、おわかりでしょう。

そもそも空売りのリスクは大きい

ちなみに、空売りをする場合、通常の売買手数料に加えて、貸し株料や管理料、逆日歩などの余分なコストが基本的にかかります。

 

また、株価の値下がりは有限ですが、値上がりは理論上無限ですので、値上がりによって損失を被ってしまう空売りでは、無限の損失が生じる可能性もあります。

 

ですから、そもそも空売りはリスクの大きい取引方法だということも、忘れないようにしましょう。

 

まとめ:そう簡単に儲かる投資法はない

空売りをして未決済の状態で権利付き最終日を越した場合は後に、配当金に相当する「配当落ち調整金」を、株の貸主である証券会社に支払わなければいけません。

 

したがってその支払い金額を考慮すれば、「権利付き最終日前に株を空売りし、権利落ち後の株価下落時に買い戻して返済する」という手法も、実質上の利益になるかどうかはわかりません。また、権利落ち後に株価が下がらない可能性もあります。

 

そしてそもそも、空売りはリスクの大きい取引方法です。

 

それらの事実は、決して忘れないようにしましょう。要するに、そう簡単に儲かる投資法はない、といえるのかもしれません。

 

株式会社ソーシャルインベストメント 取締役CTO
川合 一啓