「中高年のひきこもり」と聞くと、仕事もしない怠け者…というイメージをもたれがちです。しかし、まったくそんなことはありません。誰の身にも起こりえる「ひきこもり」の実状を、臨床心理士の桝田智彦氏が解説します。 ※本連載は、書籍『中高年がひきこもる理由』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
日本人は「先進国で一番孤独」ひきこもりと背中合わせな中高年の実態 ※※画像はイメージです/PIXTA

じわりじわりと襲ってくる「セルフネグレクト」…どんな状態?

ひきこもりを考えるときに、「孤独」の問題は避けて通れません。

 

孤独が人をひきこもり化させ、ひきこもることでその人の孤独が加速する……。そんな悲しい相乗作用があるのが、ひきこもりと孤独の関係なのです。

 

孤独になると、その人にじわりじわりと絶望が襲ってきます。絶望とは、読んで字のごとく、望みが絶たれた状態なので、絶望に置かれた人はセルフイメージ(自己評価)が日を追うごとに低下していき、徐々に自分を粗末にしていくようになります。これが、いわゆる「セルフネグレクト」という状態です。

 

セルフネグレクトとは「自己放任」とも言われます。自分の生活や健康の状態が悪化しているにもかかわらず、改善する意欲や助けを求める気力を失っていくことを指します。

 

孤独になり、セルフネグレクトの状態になると、何事にもやる気が出ず、改善もできなくなるのです。こうなると、ひきこもりがちな現状を改善しようという意識など持てません。部屋や家から出る頻度もどんどん減っていき、自分のケアをいっさいしないまま、ひきこもって生きていくようになると考えられます。