建替え前後を「写真で見比べる」…建設担当者にとって予想外だった問題
[写真2]と[写真3]は、桐ヶ丘団地建替え前の号棟と新築号棟の典型的なフロアの様子である。建替え前は玄関が平面的に並んでいるが、新築号棟は玄関が引っ込んでいる。
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玄関が引っ込んでいるので、顔を合わすことができない。今は隣りがドアを開けてもわからないから。以前はお互いにドア開けると挨拶できたが、今はあれが難しい。玄関で声かけられないから。静かすぎてお互いにわからない。横並びは交流ができやすい。今の建て方は本当に交流がしにくいよね。つくり方の問題。人が入れるスペースだから、誰かが隠れていてもわからなくて怖い。最初は本当に怖かった。引っ込んでいるから車いすもギリギリで大変。そういうことまで考えていないようだ。(2012年11月、山田さんと高野さんへのインタビュー)
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引っ込んでいる玄関に対する住民の不満を建設事務所の関係者に伝えると、そのような問題があるとは想像もできなかったと驚いた。
そして、引っ込んでいる玄関は、お互いに出入りする時に体がぶつかったりする不具合がない動線を導くよう配慮したものであり、さらには、車いす2台がすれ違うことができる幅を確保するためのものであると説明した。つまり、他の車いすが通過するのを引っ込んだ玄関で待つことができる設計であるのだ。
担当者は、玄関を深くせずに、玄関前の幅を広げたりする工夫もしているが、そうすると別のスペースを使ってしまい、家が狭くなる恐れがあるので、このような工夫を施しているとも話した。
このことから、使う側の便利のためという意図が住民たちには伝わっていないことがわかった。フロアで自由に動けるように配慮した計画が、住民たちにはむしろ不安感や孤独感を与えているのだ。