ただの理想じゃない!ひざの再生医療に続々登場の新治療

2,500万人以上の日本人が患っているといわれる変形性膝関節症ですが、その発端となるのが、ひざ軟骨のすり減りです。これまで「すり減ってなくなってしまった軟骨は元には戻らない」「進行したら人工関節にするしかない」というのが一般常識でしたが、それが変わるかもしれないという期待が高まっています。どういうことなのか、再生医学の研究経験を持つ、大阪ひざ関節症クリニック院長の保田真吾医師に、ひざの痛みに対する再生医療について解説いただきました。

変形性膝関節症が完治しないと言われる理由

変形性膝関節症では軟骨のすり減りがきっかけとなり、その影響による周辺組織の炎症で痛みが生じます。そのため、炎症による痛みの改善と軟骨の修復と、両方にアプローチできれば良いのですが、鎮痛薬やヒアルロン酸注射など、一般的な治療法は痛みの緩和だけを目的としているのが現状です。理由は、軟骨を再生させる特効薬が現時点ではないからです。

 

加えて、軟骨のダメージは、他のケガと違って自然には修復されません。8割ほどが水分でできている軟骨は、栄養を運ぶ血管もリンパ管も通っていませんし、細胞も少ないので、自然治癒の働きが生まれにくいのです。まったく再生していないわけではありませんが、スピードがものすごくゆっくりなので、変形性膝関節症で進行する軟骨の損傷に修復が追い付きません。そのため、変形性膝関節症は完治しないと言われているのです。

 

ただ、医療がひざ軟骨の再生をあきらめているわけではありません。国内外の様々な機関で、長年研究が行われています。

 

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軟骨の再生医療は研究がぐんぐん加速!

■保険適応にもなっている軟骨再生医療がある

もともとの再生力を期待できないなら、健康なひざ軟骨をつくって移植しよう! という考えは、かなり以前からありました。例えば、患者さん自身の軟骨を少しだけ採取し、体外で増殖した軟骨を欠損部分に移植する「自家培養軟骨移植術」は、すでに2013年に保険適応の治療となっています(当然、研究や治験はそのずっと以前から)。

 

残念ながら変形性膝関節症は適応外で、スポーツや事故で4㎝2以上欠けてしまった軟骨の治療が対象ですが、培養した自分の軟骨で物理的に埋めるというのは画期的な治療法と言えるでしょう。

 

 

 

■自己細胞シートに、iPS細胞! 治療研究も次のステージへ

自分の軟骨を培養するという考えからは、別の治療法も研究が進んでいます。それが「自己細胞シート」です。培養した軟骨をシート状に加工し、軟骨がすり減っている部分に手術で貼りつけます。自家培養軟骨移植術と似ていますが、こちらは変形性膝関節症にも適応でき、欠損の大きさに制限もありません。ただし、公的な医療保険が適用されるのは診察や検査、入院費などで、細胞シートの作成や移植といった先進医療に係る費用は、10割自己負担となる点なども、違いとしてあげられます。

 

また再生医療の認知を広めたiPS細胞でも、ひざ軟骨の再生を試みる治療研究がなされていて、京都大学の研究グループが申請していた臨床研究計画が、2020年1月、厚生労働省に承認されました。人工幹細胞のiPSから軟骨を作成し、ひざ関節に移植するという治療法です。まずはケガや事故による軟骨欠損の応用からのスタートですが、変形性膝関節症への適応も目指して研究が進められています。

 

自己細胞シートやiPS細胞による治療は期待できる治療ですが、一般的に多くの人が受けられるようになるには、まだ時間がかかるというのが実際のところです。そうなると気になるのは、すでに提供されている再生医療の効果はどうなのか、ということではないでしょうか。

 

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すでに提供されている再生医療の効果は?

いま受けられる変形性膝関節症の再生医療としては、「ひざのPRP療法」の記事でもあった患者さん自身の血液を原料とする治療と、「培養幹細胞治療」のように脂肪幹細胞を注射する治療法が代表的です。先にあげた軟骨の再生医療のように入院をともなうような手術が不要なこともあり、自由診療で扱うクリニックが近年急増しています。

 

 

 

■進行期のひざの痛みに有効な、PRP療法や幹細胞治療

前提としてこれらの再生医療では、変形性膝関節症の炎症を鎮めたり、疼痛を抑制するといった働きが得られることがわかっています。実際に当院でも、鎮痛薬やヒアルロン酸注射など、一般的な緩和療法が効かなくなったケースでも、痛みの改善が得られるケースが多く見られます。「小走りで出ていた痛みが消え、社交ダンスが週に2回できるようになった」「歩くと20分で出ていた痛みがなくなり、1時間歩けるようになった」「出歩くのも苦痛だったが、色々と意欲が湧いてきた」など、変形性膝関節症の痛みが改善され、喜ばれる患者さんが少なくありません。

 

■軟骨再生のヒントとなるか? MRI3D解析システムの画像

あとは軟骨再生の作用があれば、変形性膝関節症の完治に近づくのですが、効果として明言できるだけのエビデンスは、現在のところありません。ただ、幹細胞治療でごく少数ながら、MRIに映る軟骨の厚みが厚くなっていたという報告がある他、当グループでも気になる症例が見受けられています。

 

 

 

こちらは銀座院で解析した、ひざ関節(大腿骨遠位端)のMRI3D画像です。左側が治療前で右側が培養幹細胞治療後なのですが、すり減ってなくなっている軟骨の範囲が、治療後には縮小しているように見て取れます。まだ解析は始まったところですが、この現象が見られる症例の特徴や、何が影響して起こっているかなど、今後も追及すべきテーマだと考えています。

 

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さらに広まる再生医療の選択肢

10年後、20年後には、再生医療はさらに進歩し、選択の幅はもっと広がることが予想されます。ただ、すでに変形性膝関節症の予備軍や初期の可能性も高い40代、50代にとっては、いまこそ、将来も現役でいるためにひざのことを真剣に考えるターニングポイントではないでしょうか。だからこそ、いま受けられる治療の選択肢として、保険診療の他にも実用化されている先進的な治療法があることを知っておいて欲しいのです。そのためのひとつの情報として、今回の記事もお役立ていただければと考えています。

 

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大阪ひざ関節症クリニック 院長

■大阪ひざ関節症クリニック https://www.knee-osaka.com/


医学博士を取得後、京都大学助教授として先進的な医学の研究にも従事。臨床では人工関節置換術も数多く執刀し、医長や副院長も務めてきた。
こうした経験から培った知識や技術を活かしつつ、困難な症例にも丁寧に向き合う。


著者紹介

連載専門医が教える「ひざの痛み」を改善させる基礎知識&最新情報

*Pers YM, et al. Adipose Mesenchymal Stromal Cell-Based Therapy for Severe Osteoarthritis of the Knee: A Phase I Dose-Escalation Trial. Stem Cells Trans Med 5: 847-56. 2016.
※記事内図表「自家培養軟骨移植術の流れ」出所:「自家培養軟骨移植術」とは?|ひざ再生医療ライフ