レントゲンだけじゃダメ?変形性膝関節症でMRI検査する理由

変形性膝関節症の検査といって思い浮かべるのが、X線検査、そうレントゲンではないでしょうか。だいたいの整形外科でまずレントゲンを撮りますが、ときにはMRIで検査することもあります。今回解説いただく横浜ひざ関節症クリニックの尾辻正樹院長も、治療を検討・提案するときは必ずMRI画像の情報も参考にすると言います。なぜレントゲン写真だけではダメなのか、MRIの情報を重視するのか、その理由について伺いました。

隠れた痛みの原因やリスクを映し出すMRI

◆変形性膝関節症の現在の進行度を探るレントゲン検査

レントゲンはX線で簡易に短時間で検査できるので、ひざの痛みがあり受診された患者さんで、問診や診察から変形性膝関節症が疑われるときは、ほとんどの整形外科で行われています。

 

シンプルな写真情報なので骨の形状の変化がわかりやすく、骨や関節がどれくらい変形しているかが読み取れます。変形性膝関節症にはレントゲン写真から進行具合を診断する指標があり、関節の隙間の広さや骨の形によって、正常なひざから末期のひざまでをゼロ〜4までのグレードに分類することができます。グレード2の初期であればヒアルロン酸注射を行いつつ運動療法で経過をみることが多いでしょう。グレード3〜4くらい進行してしまっている場合は、手術を考えるようなひざの状態ということになります。

 

 

 

◆未来のリスク予測にまで役立つMRI画像

ただ、骨の形だけでは隠れた痛みの原因がわからないこともあります。ひざ関節は骨以外にも様々な組織で組み立てられているので、骨以外の異常が痛みに影響していることも多いのです。そんな隠れた原因を探るために行う検査がMRIです。

 

 

 

MRI画像では、組織がどのような状態かまで視覚的に調べることができます。例えば軟骨のすり減りの場合、レントゲンだと関節の隙間の大小で程度を推測しますが、MRIでは軟骨そのものが映し出されます。半月板や靭帯も損傷、もしくは断裂していないかどうかがわかります。骨においては炎症や壊死といった内部の状態まで確認できます。

 

 

レントゲン写真からわかる変形性膝関節症の進行度と痛みの強さが釣り合わなかったり、生活に支障が出てしまっているケースでは、このような隠れた原因が関係していることも考えられます。60歳以上ともなると経年変化によって、半月板や靭帯に何かしらの異常をきたしていることが多いのですが、その有無をMRIでは見つけることができるのです。

 

さらに、骨髄浮腫という骨内の炎症が認められるケースでは、人工関節の手術が将来必要になる可能性が高まることを示唆する研究結果も報告されています。先のリスクを加味して治療を検討するための情報が得られるのも、MRI検査の特長と言えるでしょう。

 

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再生医療の適応診断には精密検査が欠かせない

◆改善するか、その可能性の判断にMRI画像は役立つ

 

まだ40代や50代で手術をするには早過ぎる人や、手術に抵抗があってできれば受けたくないという人も少なくありません。そうした患者さんですでにヒアルロン酸注射が効かなくなっている場合は、それ以外の第3の治療法を探すことになります。

 

以前は他に選択肢がなく、あきらめてヒアルロン酸注射を続けるしかありませんでしたが、最近は「培養幹細胞治療」や「PRP-FD注射」など、再生医療をはじめとする先進的な治療法を選ぶ人も増えてきました。しかしさすがに、受けさえすれば誰でも痛みがなくなるような、万能治療というわけではありません。効果の見込みは治療前のひざ関節の状態によって違ってくるため、事前の適応診断が必要です。ひざ関節の詳細をうつし出したMRI画像は、その診断をするうえでも欠かせない情報源となっています。

 

当院に来られた患者さんで、レントゲン診断で「人工関節ですね」と告げられたという方は沢山いらっしゃいます。確かに、人工関節が適応となる段階かどうかを判断することはできます。ですが、再生医療でも改善の可能性がないという診断にはなりません。軟骨や半月板、靭帯など、関節組織の状態によっては、効果が期待できることがあります。もちろん、手術適応にならない段階で行った方が高い治療効果が望めますが、進行期や末期の状態でも詳細な検査結果によっては、手術以外で治療できる可能性も出てくるというわけです。

 

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検査は受けるだけでなく、理解と納得が大切

◆医師と患者の認識の差が治療結果に影響する可能性もある

 

MRI検査を行うのには、診断で必要という他に、治療後に「受けて良かった」と患者さんに満足していただくためという理由があります。なぜなら満足度は、QOL(生活の質)の改善にも大きく影響するからです。

 

十分な情報や説明が得られない場合、大半の患者さんが疑問や不安を抱くのではないでしょうか。仮に受けた治療が本当に最善の選択だったとしても、患者さんが十分な理解や納得ができていなければ、満足度が得られにくいことは往々にしてあります。数年前にニューヨークタイムズに掲載された記事では「患者さんの3分の2は診断結果を理解できていない」「治療を受けたのに良くならない、あるいは悪化する原因の7割はコミュニケーション不足」という調査報告が紹介されていました。

 

ご自身のひざについて詳しく理解したうえで出した答えという気持ちの後押しとしても、MRIは役立つ検査です。ただそれは、内容をしっかり理解してこそのメリットです。医師が丁寧にわかりやすく説明する、ということが大前提としてありますが、患者さまとしてもただ漠然と診察を受けるだけで終わらないように心掛けて頂くことで、より有意義なものになるかと思います。

 

◆百聞は一見にしかず!軟骨のすり減りがわかる3D画像も登場

そうは言っても、検査画像も言葉だけでは伝わりづらいこともあるので、当院では検査結果をご説明するとき、よく関節模型を使っています。最近では、患者さんにも一目で軟骨の状態がおわかりいただけるような、MRI画像の解析システムも登場しました。ひざ関節症クリニックグループでも銀座院に導入していて、MRI画像の情報から軟骨量が割り出せ、ビジュアル的にも3D画像化が可能です。下の画像が解析の一例なのですが、軟骨がすり減っている位置やどれくらいすり減っているかなどが、一目瞭然でお分かりいただけるかと思います。患者さんと共有するべき大切なひざ関節の情報を、イメージでより具体的に持てるようになりました。

 

 

病気は進行すればするほど、治療選択の幅がなくなっていきます。初期に有効なヒアルロン酸注射と、最終手段となる人工関節の手術との間を埋める治療として「PRP-FD注射」や「培養幹細胞治療」などが広がっているところですが、それすら選択できなくなることもあります。だからこそ選択肢が複数あるうちに、専門的な診断を受けて、リスクなども理解したうえで適した治療を検討することをおすすめします。

 

「PRP-FD注射」のひざ痛への効果とは?

 

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横浜ひざ関節症クリニック 院長

■横浜ひざ関節症クリニック https://www.knee-yokohama.com/


手掛けた外科手術の大半がひざ関節で、変形性ひざ関節症はもちろん、スポーツ外傷も数多く担当してきた整形外科専門医。
過去にはJリーグのチームドクターを務め、前職でも難渋症例にPRP療法を用いてきた経験も持つ。


著者紹介

連載専門医が教える「ひざの痛み」を改善させる基礎知識&最新情報