加齢によりひざが痛む「変形性膝関節症」。その初期治療として一般的に行われているのが「ヒアルロン酸注射」です。しかし注射を継続しているにも関わらず「痛みが治まらない」「治まっても痛みがぶり返す」……と、悩んでいる人が多くいます。なぜ、痛みを取り切ることができないのか、ヒアルロン酸注射に変わる有効性の高い治療方法はないのか、変形性膝関節症の治療に詳しい大阪ひざ関節症クリニックの保田真吾院長が解説します。

変形性膝関節症の初期治療は「痛みの緩和」が目的

変形性膝関節症の治療には、大きく分けて「保存療法」と「手術療法」の2つがあり、軽度の場合は、薬物、ヒアルロン酸注射、寒冷/温熱などの保存療法が選択されます。いずれも根本原因にアプローチするのではなく、痛みを軽減するための対症療法です。変形性膝関節症の初期に行われる主な保存療法と、ひざの負担軽減を目的とした運動療法について簡単に説明していきましょう。

 

◆薬物療法…激しい痛みには必要だが長期使用は避けたい

運動をしたくても痛みで動けないという場合には、鎮痛効果や抗炎症作用のある薬物を使用します。「痛い → 運動をしなくなる → 筋力低下 → ますます運動が億劫」という悪循環を断ち切るためにも、痛みが激しい場合には薬を使う必要があります。ただし内服薬や湿布など薬の種類や使用法によっては、胃腸障害や吐き気などの副作用のリスクも考える必要があります。主治医とよく相談して判断するようにしてください。

 

◆温熱/寒冷療法…熱感や腫れがある場合​は冷やし、慢性の痛みは温める

炎症が強い場合には腫れを抑えるために冷やしますが、慢性的な痛みには温熱療法が有効です。医療機関では電気療法、レーザー療法、超音波治療を行い、セルフケアとしては温湿布やホットパック、入浴などで患部を温めて、血行の促進や可動域の拡大を目指します。

 

◆ヒアルロン酸注射…痛みを軽減させる

弾力性のあるヒアルロン酸をひざの中に注入することで、軟骨を保護し、ひざ関節の滑りを滑らかにします。軟骨のすり減りを防ぎ、痛みを軽減する効果が期待できます。

 

◆運動療法…重症度に関わらず必要な治療

運動療法は重症度に関わらず、変形性膝関節症の患者さんすべてに適応となります。膝を支える筋肉を鍛えることで痛みや膝への負担を軽減するとともに、ストレッチによって関節の可動域の維持と向上を目指します。水中ウォーキングや軽いサイクリングもおすすめです。

 

変形性膝関節症でしてはいけない運動やおすすめの運動について詳しく解説した記事も、参考にご覧ください。

 

変形性膝関節症の診断/治療の進め方|ひざ痛研

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ヒアルロン酸注射は変形性膝関節症の治癒には至らない

◆効果がないなら継続はおすすめできない保存療法

これらの保存療法のなかで、多くの患者さんが継続して行っているのがヒアルロン酸注射です。薬物療法は副作用の懸念もあり、基本的に効果がない場合は長期に処方を続けません。運動療法や温熱療法は劇的な痛み改善とならず、患者さん自身の意欲が続かないのが実際のところだからです。

 

とはいえ、ヒアルロン酸注射を長年続けても、結局は痛みが完全に取れるわけではありません。その理由は、ヒアルロン酸が体内に吸収され、治療効果が長く続かない点にあります。

 

◆ヒアルロン酸注射は関節液の質を向上させる

ヒアルロン酸は、N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸によって構成された高分子の物質で、細胞と細胞をつなぐクッションの役割をしています。私たちの体内では皮膚に多く含まれる成分で、水分を保持する力に優れています。加齢によって皮膚が乾燥するようになるのは、ヒアルロン酸の量の低下と大きな関係があります。

 

同様のことがひざ関節内でも起きています。ひざ関節内は「関節液」と呼ばれる液体で満たされています。関節液にはヒアルロン酸が含まれていますが、その成分は加齢とともに減少し、関節液の質が悪くなると、軟骨を保護できなくなります。そうすると関節が動くたびに軟骨同士が接触し、すり減っていくようになります。

 

そこでヒアルロン酸を注射し、関節液に粘り気と保湿力をプラスし、軟骨を保護するのです。これによって痛みが軽減されるとともに、軟骨自体がすり減るのを予防します。

 

◆1~2週間でひざ関節から消失するヒアルロン酸

ただし外部から注入したものは、体が異物と判断し排除しようとします。正しい免疫反応ではあるのですが、その結果、ヒアルロン酸は1~2週間程度でひざ関節から消失してしまいます。

 

医療機関では健康保険適用の範囲で、週に1~2回のヒアルロン酸注射をすすめられるでしょう。軽度であれば、症状が治まる場合もありますが、ヒアルロン酸には抗炎症作用や軟骨を再生する効果はありません。多くの人は注射をやめれば痛みがぶり返すので、10年以上もヒアルロン酸注射を継続している人も珍しくはありません。

 

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再生医療でひざの痛みは取りされるのか?

保存療法で痛みが軽減できなければ、チタンやスチール製の関節を装着する「人工関節置換術」を行う手術療法へと移行しますが、人工関節の寿命は10~15年といわれており、若いころに手術を受けてしまうと高齢期に再手術の必要が生じるというデメリットがあります。

 

そこで、40代、50代の変形性膝関節症の治療として、注目を集めているのが再生医療をはじめとする先進的な治療です。当院でも、患者さん自身の血液を利用した「PRP-FD注射」や、腹部などから採取した脂肪を利用する「培養幹細胞治療」を行っていますが、治療を受けられた患者さん多くが、長期的な痛みの改善を実感されています。一時的な痛みの軽減だけを目的にするのではなく、根本的な痛みの解決を目指すのであれば、根本的な解決を目指すのであれば、再生利用をはじめとする先進的な治療の検討をおすすめします。

 

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