ひざ痛を持つ人の半数以上が、40代、50代に痛みを意識し始めます。多忙な日々で病院にも行かれず、湿布やサプリメントでごまかしている人も少なくありません。しかし痛みを放置すれば、将来、歩行困難や寝たきり、認知症へと移行するリスクは激増します。ひざの痛みの原因は? ひざの痛みに対する適切な治療法とは? 横浜ひざ関節症クリニックの尾辻正樹院長が解説します。

わずかな「ひざの痛み」を放っておくと……

■ひざの痛みの原因は「変形性膝関節症」

歩き始めや階段を下りる際に感じるひざの痛みは、強い痛みではないうえに、痛くないときもあり、何となくやり過ごしてしまう人もいます。痛みを和らげようと、自己判断で湿布や鎮痛剤、サプリメントで改善を試みる人もいるでしょう。

 

しかし、わずかなひざの痛みであっても放置するのは大変危険です。

 

40代以降で始まるひざの痛みの多くは「変形性膝関節症」と呼ばれる病気が原因です。ひざ関節のクッションの役目をしている軟骨がすり減ることで、ひざ関節が変形していくのですが、痛みと関節の変形は必ずしも一致しません。そもそも痛みの感じ方は人それぞれであり、変形の仕方によっては痛み以上に病状が悪化し、あっという間に歩行困難になってしまうケースもあるのです。

 

■「変形性膝関節症」のハイリスク者とは?

とくに若い頃にサッカーやバスケットボール、バレーボールなど、ひざを酷使するスポーツの経験がある人は注意が必要です。過去の半月板や靭帯の損傷によって、ひざ関節に水がたまりやすくなり、変形性膝関節症のリスクが上がります。

 

また、近年急激に体重が増加した人や運動不足の人もハイリスクです。ひざ関節にかかる負担が大きくなればそれだけ変形が大きくなり、また筋肉量の減少はひざを支えるパワー不足となってしまいます。

 

女性の場合は更年期が原因で変形性膝関節症のリスクが高まることがわかっています。軟骨も関節も更年期に減少する女性ホルモンやエストロゲンに守られているからです。

 

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ハイリスク者でなくても「変形性膝関節症」になる

■クッションの役目である軟骨と関節液の変化が原因

ただし、こうしたハイリスクな環境になくても、変形性膝関節症は多くの人を悩ませます。それは、根本的な原因が「老化」にあるからです。

 

ひざ関節は、大腿骨と脛骨をつないでおり、関節が動く際には衝撃が生まれますが、それを緩和するのが軟骨です。立つ、座る、歩くなど、さまざまな動作のたびに軟骨は刺激を受けることになります。

 

軟骨は「関節液」という弾力のある液体に保護されていますが、加齢とともに皮膚の弾力が失われるように、関節液も次第に弾力を失います。その結果、軟骨がダイレクトに衝撃を受け、すり減ってしまうのです。

 

 

■変形性膝関節症で「認知症のリスク」が2倍近く上昇

症状が悪化すると、半月板が円形状にすり減り、部分的に軟骨が消失します。さらに骨にまで損傷が及べば強い痛みが生じ、極端なO脚になって歩くことができなくなってしまいます。歩行困難から、最終的には寝たきり状態に陥り、刺激のない生活から認知症へ移行してしまう人も少なくありません。

 

大阪大学が発表した論文では、65~79歳でひざ痛ある場合には認知症発症のリスクが1.73倍にも膨れ上がると報告されています。

 

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変形性膝関節症を根本から治す最新治療

■人工関節とヒアルロン酸治療を避けたい理由

変形性膝関節症は悪化するほど治療が難しくなります。最終的には本格的な手術によって、チタンやスチール製の関節を装着する「人工関節置換術」を行うしかなくなります。しかし、この手術は3~4週間の入院を要し、手術時の出血、感染症、その他の副作用が懸念され、できれば避けたいと考えている方が多いのではないでしょうか。

 

では、どうすればいいのでしょうか。初期症状では「ヒアルロン酸注射」が整形外科では頻繁に行われています。しかし、軟骨の修復作用や炎症反応を治める効果はほとんどなく、症状の進行を止めることは叶いません。また、強い痛みを伴う治療であるにも関わらず、ヒアルロン酸は体内に吸収されてしまうため、継続して治療を続けなければなりません。

 

■注目の再生医療で一生歩けるひざ関節を手に入れる

そこで、いま、もっとも注目されているのが再生医療をはじめとした先進的な治療法です。

 

歯科治療や皮膚のアンチエイジング、角膜や網膜、毛髪の再生では、すでに臨床がスタートしていて、当院でもひざ痛の治療に、患者さん自身の血液を利用する「PRP-FD注射」と、腹部などから採取した脂肪を利用する「培養幹細胞治療」の2種類があります。

 

症状が軽いうちのほうが再生医療の効果を見込めるため、関節症の進行を遅らせるだけでなく、患者さん自身の自己治癒力を高めることから、病気そのものの改善にも期待が持てます。

 

もし、「あっイタタ……」とひざを押さえた経験あるなら、一度はひざ関節を専門に治療する医師の診断を受けましょう。今の生活の質を上げ、一生、自分の足で歩くためにも、早期の診断と適切な治療を受けることをおすすめします。

 


▶診断に必要不可欠な変形性膝関節症の検査について、尾辻院長の解説記事を読む

 

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