高賃料マンションの入居付け…検索キーワードを活用した集客術

音楽を愛する人たちのために作られた、24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」は、相場より3割高い賃料でありながら、高い稼働率を保ち続けています。本連載では、書籍『新版 24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」が起こす満室賃貸革命』より一部を抜粋し、賃貸経営を成功に導く満室経営術について解説します。本記事では、ミュージションが採用する「検索キーワード」を活用した集客術を紹介します。

現在では、自社ホームページでの集客が主力だが…

ミュージションの入居者は、ほとんどの方がインターネットでミュージションのホームページを訪れ、そこから見学を申し込んで入居を決めています。インターネットがなければ、ミュージションの成功はなかったかもしれません。

 

ミュージション志木の入居者の女性に、こんな話を聞いたことがあります。

 

彼女はもともとヨーロッパに音楽留学をしていたのですが、日本に戻るにあたって、現地からインターネットを使って、東京周辺の賃貸マンションを探していたそうです。その彼女がミュージション志木を発見し、日本にいる母親に、「いいマンションを見つけたよ」と電話すると、母親もインターネットで物件を探していて、「いいマンションがあったわよ。あなた、ここに住むべきじゃない?」と彼女のためにミュージション志木を紹介したというのです。

 

海外と日本という遠く離れて生活している2人が、「音楽」と「マンション」というキーワードでマンションを探したところ、同じミュージション志木にたどりついたというこの事実は、ミュージションがターゲットとする人たちにかなりの確率で情報が届いている証明になると思います。ここでポイントとなるのが検索キーワードです。その女性と母親は、示し合わせて同じキーワードで検索したわけではなく、それぞれが頭に浮かんだ言葉で検索したはずです。

 

書籍『新版 24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」が起こす満室賃貸革命』第1章で、凡庸なマーケティングには意味がないと述べましたが、本来のマーケティングとは商品企画上の戦略キーワードとお客さまの頭の中にあるキーワードを結びつけるためのものであると思っています。

 

つまり、ミュージションとしては、こういったキーワードが打たれたとき、確実に検索ランキングで上位に来る仕組みを作れるかどうかが、勝負どころだったのです。そして、その結果はすでにご説明したとおりです。

 

 

◆テレビやラジオで紹介されることによる宣伝効果

 

集客という意味でいえば、パブリシティが効く物件であることもポイントです。ミュージションはその珍しさから、テレビやラジオで紹介されたり、雑誌に掲載されたりする機会がしばしばあります。

 

新しいものを報道するのが使命のテレビ局や新聞社から、取材の申し込みが入ると、ミュージションのコンセプトが間違っていなかったことを実感します。

 

もちろん、こちらが広告費を支払っているわけではありません。メディアの方から「取材させてほしい」とお越しいただけるのですから、ありがたいことです。過去には、ラジオで紹介された次の日にホームページの閲覧数が通常の5倍に増加し、そこから入居につながったことがありました。

 

普通、テレビや雑誌に登場するためには何百万円ものお金を支払う必要がありますが、向こうから頼まれた場合は1円もかかりません。広告費が浮いて、自動的にブランディングもできるのですから、それだけでもかなりの価値があると思います。

 

 ミュージションを紹介したメディア

 

◆尖ったマンションは普通の募集方法では埋められない

 

自慢できることではないのですが、初期のミュージションのころは集客方法が分からずに苦労しました。「必ずヒットする」と思って建てたミュージションでしたが、最初はそれまでのマンションと同じような方法で入居者を募集していたため、まったくといっていいほど反応がなかったのです。

 

だからといって空室を放っておくわけにもいかず、過去には音楽好きが集まるクラブやコミュニティがあるところに、「こんなマンションに興味ありますか?」といいながらチラシを持ち込むような、地道な広告展開もしていました。

 

ミュージション川越は、そんな草の根的な活動で少しずつ空室を埋めていったものです。あのころは、「なぜ、反応がないのか」と頭を悩ませましたが、今となれば、その原因は明白です。

 

◆ターゲットに魅力が伝えられない

 

ミュージションは相場よりも賃料が高く、その一方では、ミストサウナや床暖房などの最新設備も基本的に設けていません。そのため普通に賃貸情報誌や不動産のインターネットポータルサイトに掲載しただけでは、魅力があるどころか、見劣りしてしまうのです。

 

ミュージションの強みは、室内で音楽を思い切り楽しめることです。それなのに、賃貸情報誌やウェブサイトなどの定型ページの中では、広さ、賃料、築年数などの決まりきった一般的な情報が中心となって掲載されます。そして、条件の最後に、小さく「楽器可」という文字が入るだけ。これでは、ミュージションの魅力が伝わらないのは当然です。

 

また、自社以外の仲介業者に期待したことも間違いでした。私から見れば尖った魅力を持つ画期的なマンションだったミュージションも、特に思い入れのないほかの仲介業者から見れば、賃料の高さばかりが目立つ気取ったマンションに見えたのでしょう。その証拠に、空室情報を流しても、他社からの問い合わせは数件のみで、成約にはいたりませんでした。

高賃料マンションは物件情報メディアでは不利に

◆普通の不動産業者は空室を埋めるために何をするのか

 

不動産業者が入居者を募集する方法を知らない方も多いと思うので、ここで簡単に説明しておきましょう。

 

マンションの賃貸物件で入居者を募集する場合、まず、「レインズ」という不動産業界の流通機構に登録します。ここに登録されたデータはすべての会員(不動産業者)がパソコンなどで閲覧することができます。それにより、他の業者さんに「うちのマンションのこの部屋が空いていますので、お客さんを紹介してください」と告知することになります。

 

このほかに、間取り図の入ったチラシ(マイソク)を店頭に貼り出したり、リクルートが出している住宅情報誌『SUUMO』やウェブ媒体の「athome」「Yahoo!不動産」「スーモナビ」などに広告を打ち、露出を高めたりします。また、同じ沿線に知り合いの不動産業者があれば、「ここにお客さんをつけてくれない?」と連絡をして、お願いをしていきます。すべてやるか一部だけ採用するかの差はありますが、これが一般的な募集方法です。

 

この方法は、部屋を探す大勢の人に物件情報を伝えられるというメリットがあるように見えます。しかし、この方法でミュージションの入居者が見つかることはありませんでした。なぜなら、膨大な情報が掲載されているこれらの媒体では、ミュージションは目に触れる前に埋もれてしまうからです。

 

部屋探しをしている人たちは、ほとんどの場合、住みたい立地にある気になるマンションを賃料の安い順にピックアップしていきます。そして、ほとんどの情報サイトなどでは初期状態で「安い順」に物件が表示されます。余談ですが、この「安いものほど注目される」仕組みが、日本経済をデフレに落とし込む一つの要因ではないかと、私は感じています。

 

残念ながら、このやり方では、賃料の高いミュージションは、確実に埋もれてしまいます。賃料が高い順に検索する人がいれば別ですが、そんな人はほとんどいないでしょう。

 

また、それらのサイトや住宅情報誌の定型的な記載欄には、「ピアノ可」と書くことはできますが、D-65とは書けませんし、書けたとしても、それだけでは何のことか、読者に伝わらないでしょう。つまり特色があっても、これらの媒体はそれを見せにくい構成になっているため、本来の価値が見る人に伝わらないのです。

 

それが分かってからは、自社のホームページから入居につなげていく方針に変えました。最初はアクセスが伸びませんでしたが、ポツポツと訪れるお客さまに、「どんな検索キーワードでこのマンションを見つけてくださいましたか?」とアンケートを採るなど、地道な作業を繰り返すうち、少しずつヤフーやグーグルでの検索順位が上がってきました。

 

今は、「音楽」や「マンション」というキーワードであれば、1~6位までのうち、5つはミュージション関連になっています(2010年12月時点)。

 

 

◆困っている楽器可マンションを助けたい

 

大きな声ではいえませんが、これまでに何度か、ミュージションと同じような楽器可マンションを作った不動産業者から、「どうやったら、お客さんが決まるのですか?」と相談を受けたことがあります。話を聞いてみると、まったく申し込みが入らず、賃料を2割下げて、なんとか半分ほど埋まった状況だといっていました。

 

私から見れば、なぜ埋められないのか、そのほうが不思議です。そこで、「今までどのように募集されていたのですか?」と聞いてみると、ミュージションが最初に失敗したような一般募集しかしていないうえに、その物件の入居者募集や案内をする専門知識を持った担当者も置いていませんでした。これでは、決まるはずがありません。

 

これは自社物件のようでしたが、オーナーが借金をして建てた物件だとしたら、悲惨なことになります。そんな困っている楽器可マンションをリニューアルしてよみがえらせることができないだろうか? 私は今、そんなことも考えています(*2018年現在、既存のマンションに対してリフォーム工事を行い、防音性能を高める「ミュージションR」を商品化しています)。

 

 

鈴木 雄二

株式会社リブラン 代表取締役

 

株式会社リブラン 代表取締役

1967年、東京生まれ。株式会社大京にて分譲マンション事業用地の仕入を担当。その後、1992年、株式会社リブランへ入社し、2002年、同社代表取締役に就任する。マーケットシェアを奪い合う分譲マンション業界で、同業他社とは同じ土俵で勝負しない経営スタイルを堅持。24時間、音楽漬けを可能とするマンション「ミュージション」の分譲、賃貸事業を行い、新たなマーケットの創造を行う。

著者紹介

連載24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」で実現する満室経営術

本連載は、2018年12月12日刊行の書籍『新版 24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」が起こす満室賃貸革命』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

新版 24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」が起こす満室賃貸革命

新版 24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」が起こす満室賃貸革命

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

不利な立地も関係なし、しかも相場より3割高い賃料で長く満室経営を実現する。 その秘密は音楽にあった。 人口減少、供給過剰の賃貸マーケットで勝ち続ける新常識を教えます。 新しさにしか建物の価値を見出せない市場を…