ウエイティングリストで「次の入居希望者」を募集
ミュージションの空室率が低い理由の一つに、ホームページの「ウエイティングリスト」の活用があります。ミュージションでは新しいミュージションの企画が決まると、ホームページを立ち上げて、ある時期から入居者の募集を開始します。例えば、ミュージション登戸では完成予定の3カ月前にあたる12月から募集を開始し、2月には全室の入居者が決まっていました。
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ところが、ミュージション登戸は、工事中に地下水が湧き出るという想定外のアクシデントが発生し、完成が5月末まで延びるという展開に陥ってしまったのです。そのためいくつかキャンセルが発生したのですが、短期間で別の申し込みが入ったため、オープンまでには再び満室になりました。
キャンセルが入ってもすぐに次の入居者が決まったのは、ウエイティングリストがあったからです。ウエイティングリストには、「空室が出たらここに住みたい」という人たちが、メールアドレスを登録しています。入居者を募集する際には、このアドレスに情報を流すことで、効率よく空室を埋めることができるのです。
ちなみに、登戸の入居者の中には、工事の日程がずれたにもかかわらず、ウィークリーマンションやホテルで過ごしてまでミュージションへの入居を待たれていた方が、何人かいらっしゃいました。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでしたが、これほどまでに支持してもらえたのは、「ミュージションでしかできない暮らし」があり、それがしっかりと伝わっていたからだと思います。立地、価格、広さといった一般的なマンションの土俵では、ほかにとって代わる物件があるため、ウエイティングリストは作れません。
ただし、空室の出る時期や登録者の状況など、それぞれにタイミングもあるため、ウエイティングリストを使えば必ず反応があるとはいえませんが、それでも、「空いたら住みたい」と思っている人がいて、そこに連絡できる手段があることは、賃貸マンション経営の強い武器になるのは間違いないでしょう。
ほかにない環境だからこそ、大切に住んでもらえる
国土交通省が発表した「平成20年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の状況」によれば、「居住者間のマナー」に関するトラブルを抱えているマンションは全体の63.4%あり、そのうちの37.1%が「生活音」をトラブルの内容に挙げています。
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人間は自分の出す音には鈍感ですが、他人の出す音には敏感です。ですから、ミュージションを始めたときには、ある程度のクレームが出ることは覚悟していました。実際に、最初のころはいろいろと問題も発生しました。しかしそれは、必ずしもミュージション自体が原因ではなく、入居者の皆さんがミュージションを大切に思って住んでくれているから起きたことも多々あったのです。それを証明するかのような小さな事件を一つご紹介しましょう。
ミュージションでは街の暗騒音を利用して遮音性能を高めているため、暗騒音が低くなる深夜12時以降は、楽器によっては演奏を制限しています。あるとき、ある住人から「隣から音が聞こえる。俺は11時55分には演奏をやめているのに、ルールを守らないなんて非常識だ」と怒って当社の担当者に電話がかかってきたのです。
ミュージションではこのような隣人トラブルが滅多にないので、担当者は驚いてかけつけたのですが、行ってみると隣の部屋の音は聞こえませんでした。しかし、耳のいい人には聞こえるのかもしれないと思い、騒音計で測定したところ、深夜ということもあり、若干音が聞こえていたことが分かりました。
このとき意外だったのが、その入居者から担当者に、「音が漏れるなんてこのマンションはどうなっているんだ」というような、ミュージション自体へのクレームはひと言もなかったということです。苦情の電話をかけてきた人は、「せっかくこんなにいいマンションができて、みんなルールを守って楽しく住んでいるのに、どうしてそれを壊すようなことをするんだ」と、怒っていました。怒りの向かっているベクトルが違うことが分かっていただけるでしょうか?
彼は、ミュージションで手に入れた快適な環境がずっと変わらないでいてほしいと願い、そのために自分もルールを守っているのに、隣の人がそれを破ったから、腹が立ったのでしょう。
この話を聞いたときは、入居者の方々のミュージションへの思いを知ることができ、企画者としてとてもうれしく思いました。普通のマンションなら、何かトラブルが起きたときに、「引っ越して別のところに住めばいい」という選択肢があります。しかし、ミュージションの場合、同じレベルの遮音性能を持った物件がほかにないため、簡単に「もういいよ、ここから出て行くから」というわけにはいきません。
そのせいか、ミュージションはほかのマンションに比べて、家賃の滞納やトラブルが少ないという印象を受けます。賃料の高いミュージションをあえて借りているその状況が、入居者の夢や目標に対する思いを奮いたたせ、音楽以外の余計なことでもめないようにするという意識を強めているのかもしれません。
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鈴木 雄二
株式会社リブラン 代表取締役