音楽を愛する人たちのために作られた、24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」は、相場より3割高い賃料でありながら、高い稼働率を保ち続けています。本連載では、書籍『新版 24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」が起こす満室賃貸革命』より一部を抜粋し、賃貸経営を成功に導く満室経営術について解説します。本記事では、入居者を長期間維持させるための工夫について見ていきます。

音楽好き以外は「お断り」することで価値を維持

ミュージションの営業でいちばんこだわっていることは、「音楽好きの人に入ってもらう」ということです。なぜなら、音楽をやらない入居者が増えてしまったら、ミュージションがミュージションでなくなってしまうからです。

 

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マンションの持つ雰囲気や入ったときの印象というものは、そこに住む人たちが自然に作り出していくものなのです。防音マンションであるミュージションの価値を維持し、歴史を積み上げていくために、その部分は譲れません。

 

例えば、ミュージション志木は、駅の目の前にあり、目をひくデザインのため、立地とデザインだけを見て借りたいといってこられる方もたくさんいます。しかし、私はそういう人たちには、他のデザイナーズマンションを紹介します。

 

同じマンション内に、音楽という同じ趣味、同じ価値観の人が集まれば、会合が開かれたり、仲間同士でセッションが行われたり、そこから新しいことが生まれるかもしません。そして、それがまたプロモーションになっていきます。つまり、歴史が積み上がるのです。

 

[図表]ミュージションの入居者の音楽との関係性を示すデータ
[図表]ミュージションの入居者の音楽との関係性を示すデータ

 

一方、音楽に興味のない人が入ったら、どうでしょう。セッションは当然起こらないでしょうし、コミュニティの形成も軸のないものになってしまうでしょう。そのうち、音楽をやっている人とそうでない人が半々くらいになれば、音にまつわるトラブルも起きてくるかもしれません。

 

ですから、ミュージションの入居者を音楽好きに絞るという意味は想像以上に大きいと私は思っています。

 

では、入室希望者の音楽への真剣度をどのように測るのでしょうか? それは、少し会話をしてみればすぐに分かります。

 

例えば、部屋を案内するとき、担当者は、入居希望者にどの程度音楽に対するやる気があるのかを確認するような質問をします。そこで、「音楽を本気で頑張りたいと思ってるんです」という返事をした方には、具体的にどのくらい頑張るのかについて、また問いかけます。

 

話しているうちに、「それでは、週のうちにピアノを弾かない日はないんですね?」「いえ、今は3日、いや、1日くらいです……」という展開になることもあるのですが、そんなときに、わざわざこちらからその矛盾をつくことはしません。

 

その代わりに、淡々とした口調で、「本気で音楽をやりたい人に借りてほしいと思っているんです。(その程度の思いでしたら)賃料は安くないですからやめたほうがいいと思いますよ。他の物件を見てこられたらいかがですか?」といったん、お断りします。そこで静かに帰る方もいますが、意外と多くの方が、「じゃあ、私は借りられないんですか? 借りたいっていってるんだから、貸してください! 今は時間がなくて練習できないけれど、本当はもっと頑張りたいんです」と、かえって決意を強めて、入居を申し込んでくれたりもします。

 

何をいいたいのかというと、お客さまと我々は対等だということです。借りてほしいからといって、頭を下げ過ぎることもないですし、過剰にサービスすることもありません。

 

お客さまはありがたく大切な存在ですが、相手との関係性を間違えると、値切られたりすることにもなります。お客さまの欲しい価値をきちんと提供できれば、値引きも余計なサービスも、必要はないのです。

 

人は、自分でいった言葉をそう簡単には裏切ることはできません。入居時に決意表明をしてミュージションに入居された方は、きっと宣言どおりに頑張っていることと思います。そして、入居者が音楽にのめりこむほど、入居期間が長くなるのもミュージションの特徴です。

「コミュニティ」を作ることで入居期間が長くなる

ミュージションでは、入居者同士が顔を合わせる小さなパーティを開催しています。賃貸マンションでは「隣の人の顔も知らない」というのが常識ですし、デベロッパーも「集団でクレームをいわれたら大変だ」と考えて、住人がまとまることを厭いとうのが通常ですので、かなり珍しい試みだと思います。

 

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なぜそんなことをするかといえば、入居者たちの人間関係が良好なら、入居後のトラブルが起きにくくなるからです。

 

パーティを開くときは、「同じマンションに音楽好きな仲間がせっかくいるんですから、知り合いになっておけば活動の幅が広がるかもしれませんよ」「とりあえず楽しんでくださいね」と声をかければ、多くの方が参加に応じてくださいます。

 

この費用はオーナーにも負担していただきます。企画にかける時間や手間もありますから、経済効率から見れば、明らかにマイナスです。

 

それでもやるのは、もう少し長い時間軸で賃貸経営への影響を見たときに、じわじわと価値が出てくるからです。具体的には、入居者間のトラブルの防止や、ほかにはない魅力を提供することで話題になり口コミが生まれやすくなる効果などがあります。そうやって入居者を味方につけることで、結局はオーナー自身が得をするわけです。

 

江戸末期に新しい国を夢見た若者が集まった「松下村塾」や、マンガの可能性にかけたクリエイターが集まった「トキワ荘」もそうだったように、コミュニティの中で自分の夢を語り合ううちに、それが実現していくということが、人間にはあると思います。ミュージション内にコミュニティを作ることは、入居者の夢を実現することにもつながっていくはずです。

 

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鈴木 雄二

株式会社リブラン代表取締役

 

本連載は、2018年12月12日刊行の書籍『新版 24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」が起こす満室賃貸革命』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

新版 24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」が起こす満室賃貸革命

新版 24時間楽器演奏可能マンション「ミュージション」が起こす満室賃貸革命

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

不利な立地も関係なし、しかも相場より3割高い賃料で長く満室経営を実現する。 その秘密は音楽にあった。 人口減少、供給過剰の賃貸マーケットで勝ち続ける新常識を教えます。 新しさにしか建物の価値を見出せない市場を…