東京23区内でも利回りが出づらくなり、郊外や地方物件も空室率上昇の問題が本格化するなど、不動産運用の先行きに不安を持つオーナーは多い。本連載では、株式会社フェイスネットワーク代表取締役社長・蜂谷二郎氏に、長いスパンで見た資産形成の手段としての不動産投資の魅力、そこで勝ち残るためのポイントなどを伺っていく。

不動産投資ブームに水を注す不正問題の数々…

今や一般的なサラリーマンまで多数取り組むようになった不動産投資。ここ数年は、まさに空前のブームと化していたともいえよう。ところが、それに水を注すかのように不動産業界を震撼させるニュースが次々と飛び出した。

 

 

不正融資問題や建築基準法違反を含む施工不良問題、さらに虚偽申告による「フラット35」を用いた投資物件購入といったように、様々な問題が露呈したのだ。いずれにおいても、資金を投じて賃貸物件のオーナーとなった人たちは、当初に描いていた想定が大きく狂ってしまっている。

 

多くの人が不動産投資を始めたのは、家賃収入というインカムゲイン(定期的収入)を得る、あるいは相続税や所得税などの節税効果を得るなど、さまざまなメリットに着目したからこそ。しかし、問題が発覚した物件のオーナーたちはそのような目論見が大きく外れたばかりか、厄介な「不良資産」を抱え込むことになってしまった。

 

2001年の創業以来、170棟超の新築一棟マンションをプロデュースし、2018年3月には東京証券取引所への上場も果たした株式会社フェイスネットワーク代表取締役社長の蜂谷二郎氏は次のように述べる。

 

「知識や経験が不足したまま不動産投資を始めて、大きなリスクを抱えてしまっているオーナーが本当に多い。残念ながら不動産業界では、自社の利益を最優先に考え、初心者をこうした間違った方向へと導くケースが多数見受けられます。いわば業者を起点とする諸問題であり、私はここに強い懸念を抱いてきました」

 

特に不正問題などが「発覚」していないケースであっても、その内容をきっちり理解せず、すべて業者任せで投資物件を購入したようなオーナーの場合、「期待通りの成果が得られていない」というほうが普通ではないだろうか。

中古の「優良物件」は市場に出回らない⁉

では、この成果が上げられていないオーナーたちは、どのようなところを見定めていなかったのか? 主に、①エリア選別の重要性、②高利回り中古物件に秘められたリスク、③適切なファイナンスの活用、といったポイントを見落としている場合が多いという。

 

 

株式会社フェイスネットワーク 代表取締役社長・蜂谷二郎氏
株式会社フェイスネットワーク
代表取締役社長・蜂谷二郎氏

「たとえば、土地の有効活用として、郊外の所有地に賃貸物件を建てることを提案された人も少なくないでしょう。普通に考えればわかることですが、そんな不便な場所に賃貸物件を建てたところで住む人がどれだけいるでしょうか? そこで、そのようなケースでは、サブリース(一括借り上げによる家賃保証)にすれば空室が出ても安心だ、と提案されます。サブリースは健全な運営を行っている業者も少なくないものの、30年保証等をうたいながら、その契約を途中で解除するような業者も現に存在する。いまや社会問題化している、こうした業者によるトラブルですが、そもそもオーナー自身が、エリア選別の重要性を知り、本気で賃貸経営の妥当性を吟味していれば、巻き込まれることはなかったはずです」(蜂谷氏) 

 

新築よりも取得費用が安く、高い利回りが見込める「中古物件」に目を向けるオーナーも多いが、現実はどうであろう。想定外の修繕費用の発生、場合によっては建て替えが必要になるなど、購入後のコストが意識されることは少ない。

 

「テナントとなる人たちは、最初に部屋を探すとき、賃貸物件紹介サイトで物件を検索するのが主流です。この際、『新築・築浅』といった条件で絞り込む人が少なくありません。そうなると、多くの中古物件は最初から入居希望者の検討の対象外となってしまいます。もちろん、中古でも投資に値する優良物件はありますが、もはや稀少で、公の市場に出回る前に業者間取引で買い手がついてしまうのが現状です」(蜂谷氏)

 

極端にいえば、一般に公開されている中古物件は売れ残りにすぎないともいえるのだ。さらに、蜂谷氏が3つ目に挙げたファイナンスに関しては、冒頭で触れたような不適切融資等の問題が露呈したことで、不動産業界には逆風が吹いている。金融庁が従来とはまったく違うレベルで監視の目を光らせる中、おしなべて金融機関は「不動産投資向け」の融資に対して及び腰となっているが、それだけに、不動産投資に取り組むオーナーにとっては、これまで以上に重視すべきポイントといえるだろう。

「本人の属性」に問題がなければ融資は受けられる

では現在、融資を受けられる条件とはどのようになっているのであろうか。実は、蜂谷氏は株式会社フェイスネットワークを設立する前に、金融機関で12年間にわたって融資を担当。不動産投資に関わる融資審査の実情にも精通する、スペシャリストなのだ。

 

 

「現状、地域密着型の金融機関による過剰ともいえる融資は影を潜め、本来の融資の審査基準に戻ったともいえます。すなわち、主に(1)物件の収益性(利回り)(2)物件の保全性(担保としての価値)(3)融資を受ける人の属性(信用力)が見極められます。私の経験則でいえば、収益性20%、保全性30%、属性50%といったウエートでしょうか。現在でも本人の属性に特に問題がなければ、融資を受けられないということはまずないでしょう」(蜂谷氏)

 

つまり、今後不動産投資で安定的に資産を形成するためには、①「適切なエリアで物件探し」を行い、 ②中古ではなく保全性の高い「新築一棟マンション」でリスクを回避し、③「融資が通る属性」である、ということが条件として求められるという。

 

次回以降、どのような物件に投資すれば着実な成果を得られ、描いた夢を叶える資産形成を達成できるのか? 上記①~③それぞれについても、その詳細をお伝えしていく。

 

 

取材・文/大西洋平 撮影(人物)/永井浩
※本インタビューは、2019年4月23日に収録したものです。