東京23区内でも利回りが出づらくなり、郊外や地方物件も空室率上昇の問題が本格化するなど、不動産運用の先行きに不安を持つオーナーは多い。本連載では、株式会社フェイスネットワーク代表取締役社長・蜂谷二郎氏に、長いスパンで見た資産形成の手段としての不動産投資の魅力、そこで勝ち残るためのポイントなどを伺っていく。最終回のテーマは、2020年以降の首都圏の不動産市況の展望についてである。

バブル崩壊⁉ しかし「2020年問題」は恐るに足らず

ついに東京オリンピック・パラリンピックの開催まで秒読み段階となったが、かねてから不動産業界では「2020年問題」とでも呼ぶべきリスクが懸念されている。

 

 

この歴史的イベントの開催が決まって以来、首都圏の不動産市況は勢いづいてきた。その反動により、ゴール(開催)を迎える前後で暴落に転じる可能性が囁かれていたのだ。しかし、株式会社フェイスネットワーク代表取締役社長の蜂谷二郎氏は「まったく恐れるに足りない」と一蹴する。

 

「エリアやターゲットをしっかりと見定め、長期的に安定収益を期待できる物件に的を絞り、その後の管理もきちんと行っていれば、キャッシュフローに乱れが生じることはまずないでしょう。仮に市況に変化が起きたとしても、『新築1棟マンション×城南3区(世田谷・目黒・渋谷)×女性』のコンセプトで建てた物件なら、大きく値崩れするようなこともないはずです(第6回『不動産投資を成功に導く「優良物件」3つの条件とは?』)」(蜂谷氏)

 

ただ、2020年の「宴」を終えると、首都圏では不動産価格の推移が二極化する可能性も考えられる。市況全体の動きに引っ張られてきたものの、実際にはさほど人気がなかったエリアで下落傾向が顕著になるかもしれない。

 

蜂谷氏の発言にもあったように、コンスタントに賃貸需要が見込まれるエリアの市況は堅調な推移を示すことが予想される。2020年を機に賃貸住宅で暮らす人の数が激減するわけではないのだから、当然なのかもしれない。

 

一方で、不動産業界の勢力地図そのものが大幅に塗り替えられる可能性もあるという。特にこだわりや強み、特色もなく、市場の活況という時流に乗ってきただけの不動産会社も少なくないからだ。

 

また、不正融資問題等の発覚を機に、強引なビジネスを展開してきた業者に対して金融機関側は警戒心を強めている。雲行きが怪しくなる前に仕入れていた土地で開発自体は行えるものの、資金繰りがにわかに悪化して身動きが取れなくなる恐れもあるだろう。

 

「早晩、不動産業界内で淘汰の動きが見られるのではないかと予測しています。そういった局面こそ、当社の真価が問われますし、私どものビジネスに対するニーズがいっそう高まるのではないかと考えています。退場を余儀なくされる業者が出てくれば、所有していた土地が市場に安く出回ることになるでしょう。そうなれば、より有利な開発を進められるようになり、当社にとっては大きなチャンスと捉えています」(蜂谷氏)

 

 

超お買い得な「割安優良物件」は巷には出回らない

ただ、有利に物件を手に入れられるチャンスが訪れたとしても、一般の投資家が独力で有望物件を探し出すのは容易ではない。実際、今でもよくこんな声が聞こえてくる。

 

 

「以前からずっと城南3区を中心に探してきたが、なかなか魅力的な物件が見つからない」

 

インターネット上の物件情報をチェックしている限り、それは正しいといえよう。だが、割安優良物件のほとんどは、一般の投資家がまったく関与していないところで密かに取引されているのが現実なのだ。

 

株式会社フェイスネットワーク 代表取締役社長・蜂谷二郎氏
株式会社フェイスネットワーク
代表取締役社長・蜂谷二郎氏

「不動産市場で取引されている土地は、公開物件と非公開物件に大別されます。公開物件はその名の通り、インターネットや新聞の折り込みチラシなどで、誰もが情報を見られるものです。売主と媒介契約を結んで売却依頼を受けた不動産業者は、一定期間内にその情報を不動産取引情報提供サイト『レインズ』に登録することが宅地建物取引業法によって義務づけられています。これが公開物件なのですが、実は市場に流通している土地の7割程度にすぎません」(蜂谷氏)

 

つまり、残る3割程度が未公開物件だということだ。では、それらはどのようなかたちで取引されているのか?

 

「売主が商談を直接持ちかけたり、仲介を持ちかけられた業者が同業者に声をかけたりして、『レインズ』で一般公開される前に取引が成立しています。本当にお買い得な物件は、市場に出回る前に水面下で売買されてしますのです」(蜂谷氏)

 

言い換えれば、公開物件の大半はプロが関心を示さなかった「残りもの」でもある。エリアや立地はよくても割高だったり、逆に価格が安くても賃貸ニーズがあまりなかったりするなどの理由で、プロたちは手を出さなかったわけだ。

 

「非公開物件が割安なのは、売主側に早く手放したいという事情があるから。特に多いのは、相続が発生する前に売却しておきたいという『相続前物件』です。当社には毎月400
〜450件余りの非公開物件情報が寄せられており、その中からより好条件のものを選りすぐっています。たとえば、公開物件なら坪単価400万〜450万円は下らない渋谷区富ヶ谷の土地を坪単価145万円で購入されたお客さまもいらっしゃいました」(蜂谷氏)

 

 

「非公開物件に関する情報」が集まる不動産会社とは?

先に述べたように、非公開物件に関する情報に一般の投資家は自らアクセスできない。しかも、その情報を取り扱える不動産会社も限られているのだ。

 

 

なぜなら、前述した「相続前物件」を実際に買い取るためには、その売り手の不動産以外の財産や相続人の数なども念頭に置きながら、総合的な相続対策を含む適切なプランを提案する必要があるからだ。要は、プランニング力がある不動産会社に非公開物件に関する情報が集中しがちなのである。

 

「売り手のニーズを把握し、的確に応えるプランを提案できるということが、他社にはなかなかマネのできない当社の強みだと考えています。社内に専門部署を抱えてプランニングのノウハウを養ってきた私どもの独自性が評価された結果、他には出回らない非公開物件が数多く寄せられるようになったのだと自負しています」(蜂谷氏)

 

有利な情報を察知し、割安優良物件に照準を定めたうえで、ワンストップで末永く不動産投資をサポートしていく…。こうしたスタンスを貫くプロフェッショナルを味方につければ、本当に心強いといえるのでないだろうか。

 

 

取材・文/大西洋平 撮影(人物)/永井浩
※本インタビューは、2019年4月23日に収録したものです。