QDOTとは
QDOTは「キューダット」と読み、正式名称である「Qualified Domestic Trust」の略です。日本語では「適格国内信託」と訳されます。QDOTは、日本と比べてアメリカでは馴染みがある一般的な “信託制度”のひとつです。
信託制度はお金や土地、建物などの財産を委任者の希望する信託目的に従って管理・運用するように信頼できる人へと託す制度をいいます。中でも、QDOTは日本人とアメリカ人との夫婦間で利用されるものです。日本人の妻や夫が、婚姻関係を持ったアメリカ人のパートナーから遺産を相続する際の税の控除で活用することができます。
アメリカと日本の相続税における制度の違いとは?
日本に相続税があるのと同じようにアメリカでも遺産が生じた場合には税金がかけられます。ただし、日本とアメリカでは相続税の制度に違いがあるため注意が必要です。相続税は遺産の時価を集計し、基礎控除を超えた部分だけに対して課税されます。日本の相続税の基礎控除は3000万円に600万円×相続人分を加えた金額です。
しかし、アメリカでは日本よりもはるかに大きな金額となっていて525万ドルが基礎控除額となります。また、配偶者控除額について、日本では法定相続分あるいは1億6000万円という上限の設定があります。しかし、アメリカでは配偶者の相続財産への控除額に上限はなく、全額非課税で受け取ることが可能です。
さらに、相続税の適用者にも違いがあります。配偶者は日本でもアメリカでも必ず固定で法定相続人です。ただし、日本では認められていませんが、アメリカでは同性婚のパートナーについても基本的には適用者とされています。そして、アメリカの相続税における配偶者控除制度では、控除対象となるのはアメリカ国籍を持っている配偶者だけです。ただし、アメリカ国籍を持たない配偶者に対してはQDOTという制度が存在しています。アメリカ人のパートナーから相続した財産をQDOT信託に預け入れることで利用できる制度です。
将来、配偶者から相続を受ける人がQDOT信託の一部を使って納税することを前提に、配偶者は納税の一時的な免除を受けることができます。被相続人となる配偶者が亡くなった後、死亡した被相続人からQDOT信託の相続を受けた人が、免除分の遺産税を差し引いて信託の換金を行うことで相続税が清算されるからです。ちなみに、QDOT信託を利用した配偶者が死亡した場合、信託の設定時に受取人として指定した人がQDOTを引き継ぐ受取人となります。
アメリカ人の妻や夫からの遺産相続時におけるQDOT制度の重要性
日本では個人や法人から税金を集める役目として国税局や税務署があり、全国の国税局や税務署を管轄する機関として国税庁があります。これに対して、アメリカには連邦税の徴収や税の執行を担当する政府の連邦機関としてIRSがあります。IRSは「アイアールエス」と読み、日本語では「アメリカ合衆国内国歳入庁」という意味です。税金に関わるQDOTについてもIRSが取り締まりをしていて、厳しい規定があります。規定により、どのような事情があっても、配偶者がアメリカ国籍を持たない場合には配偶者控除を利用することは一切認められません。そのため、日本人がアメリカ人の夫や妻から遺産を相続する際には、QDOT制度を上手に利用することが重要となるのです。