賃貸併用住宅は「女性の入居者」に好まれやすい!?
――賃貸併用住宅イメージした時に、多くの方が気になるのが、オーナーと入居者との間のプライバシーの問題だと思いますが、それはどのように配慮されているのでしょうか。
藤郷 土地の広さにもよりますが、現在では「縦割り」、つまりオーナー様の自宅部分と、賃貸部分を横に並べて建てる方法が主流です。階層別に分ける「横割り」だと、どうしても足音が響くなどの音の問題が生じやすいのに比べて、縦割りの場合は比較的それを回避できます。玄関はもちろん別にして、動線も配慮し、なるべくオーナー様と入居者様が顔を合わせなくて住むような設計にします。
森田 土地の広さの関係などから、どうしても階層別の横割りにしなければならない場合もあります。たとえば2階にオーナー様が住み、1階を貸す場合、2階でリビングになる箇所は、1階の寝室にはしない、なるべく廊下や玄関などにあたるようにするといった、間取り設計上の工夫を凝らします。これである程度、音のトラブルなどを予防することもできます。
――逆に入居者さんの方から見て、こういう賃貸併用住宅なら入りやすい、定着率がいいという傾向はありますか?
平林 音の問題というのは、人によって感じ方が違います。設計段階からなるべく配慮していただき、多少コストアップになったとしても、防音性の高い作りにしておくことは、「入居者さんの定着率を高める=空室リスクを減らす」ためにも重要です。また、長期間運営していく中で、水回りはどうしてもトラブルが多くなる部分です。そこで、水回りの部材などにはなるべくコストを掛けておき、また、メンテナンス性を考慮した設計にしておくと、長期的に見て管理コストを低く抑えることにつながります。
坂原 水回りというと、キッチンやバスルーム、洗面などですが、現在はこういったところに「女性目線」での設計、デザイン、施工を採り入れることもポイントです。ただ、入居募集の広告に「女性限定」とうたうことには一長一短があり、必ずしもお薦めしません。いまは賃貸情報サイトにたくさんの写真や360度写真、動画などが掲載されますので、女性目線のデザインで作られた部屋なら、女性限定とあえてうたわなくても、自然と女性からの問い合わせが多くなります。いまの若い男性は、料理が得意だったり、身だしなみに気を使ったりする方も多いので、そういう部屋は結果的に男性にも人気が出ます。
平林 実際、賃貸併用住宅ということでもっとも引き合いがあるのは、地方出身の女子学生や、その親御さんからです。若い女性が1人暮らしをするとき、どこのだれかわからない人が隣に住んでいるマンションに比べて、大家さん一家が同じ建物に住んでいることは、普段は特に交流などがないとしても、安心感が違うでしょう。
坂原 逆に、ご家族に娘さんがいらっしゃるオーナーさんの場合などは、女性の入居者さんを希望されることがよくあります。その意味で、お互いのニーズが合うことが多いですね。
”入って欲しい”入居者のイメージを描いて設計
――賃貸併用住宅ならではの、管理上の難しさや問題などはあるものですか?
森田 管理については、基本的に管理会社に任せるのがおすすめです。というのも、ご近所の住民からのクレームなどがある場合は、どうしても大家さんのところに直接来るからです。たとえば、賃貸入居者のゴミの出し方がちょっと悪かったような場合、町内会の集まりなどで近所の人に「お宅の入居者さんのゴミ出しなんだけど…」という風に、文句を言われてしまうことがあります。
そういうときに、今度は入居者さんに言わなければならないのですが、それを全部自分でやろうとすると、かなり大変です。そこでなるべくなら自主管理はせず、管理会社に間に入ってもらうほうが、ストレスの少ないスムーズな運営が可能になるでしょう。
平林 今のお話にもあったように、一般的には、オーナー様と入居者さんが、なるべく直接の接点を持たないで済ませられるようにすることが、管理のコツだと思います。ただ、それはどんな人が入居者でも関係ない、ということとはちょっと違います。やはり、賃貸併用住宅を建てる際には、オーナー様のほうで「こういう方に入居してほしい」という思いを明確に持たれるほうがよいでしょう。
一例ですが、愛犬家のオーナー様で「ペット可」物件ならぬ「ペットを飼っている人限定」という物件を作られた方がいました。そういう趣味というかライフスタイルの波長が合う人に入居していただければ、当然ながら日常的なコミュニケーションも生まれ、定着率はとても良くなり、空室の心配が減ります。
実際には、そこまで明確な特徴を出せるケースばかりではないと思いますが、少なくとも自分が入って欲しい入居者さんのイメージは描いておいたほうがいいですね。そういう人なら、もし多少トラブルがあってもあまり気にならなくなり、オーナー様と入居者様がお互いにハッピーな暮らしができるのではないでしょうか。ひとつ屋根の下で暮らす賃貸併用住宅だからこそ、「思い」の部分を明確になさることが、成功のコツだと思います。