今や世界有数の成長国といえる「フィリピン」。日本の富裕層による不動産投資なども進んでいるが、近年、投資先として特に注目を集めているのが「セブ島」である。本連載では、現地最大のインフラ建設会社が手がける巨大開発プロジェクト「ハロハロエデン」の全貌を明らかにするとともに、このプロジェクトに早期から参画できる「プレミアムオーナーシップ」の魅力などを探っていく。第一回目は、フィリピンという国の実力と将来性を改めて整理する。

圧倒的な英語力で人材大国としても存在感を見せる

閉塞感、先行きの不透明感が漂う日本経済とは対照的に、ここ数年来、アジアへの投資が非常に注目されているのは、みなさんご存じのとおりです。とりわけ、フィリピン、タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアから成る東南アジア10国──いわゆるASEAN(東南アジア諸国連合)には、高い関心が寄せられています。

 

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そのなかでも、今回、特に魅力をお伝えしたいのがフィリピンです。出稼ぎのために来日する人も多く、日本と馴染みが深いようにも見えるフィリピンですが、経済やビジネスの視点からその現状を正確に把握している方は、まだまだ少ないと言わざるを得ません。投資対象として、大いなるポテンシャルを秘めているフィリピンの魅力を、改めてご紹介したいと思います。

 

フィリピンは、ここ10年以上、右肩上がりの経済成長を続けています。2016年のGDP伸び率は中国を抜き、アジア第1位の経済成長率を示しています。また、今年に入ってからフィリピンの株式相場は高値を探る動きで推移しており、マーケットとしての魅力も高まるばかりの状況です。

 

「BRICs」や「N-11(ネクスト11)、「VISTA」など、成長が期待される新興国群の略称はいくつかありますが、フィリピンはべトナム、インドと共に「新VIP」の一角を成す存在として注目されています。

 

成長著しいフィリピンの勢いは、人口動態にもあらわれています。2014年には人口1億人を突破したフィリピンは、アジアでもトップクラスの出生率を示しており、人口ピラミッドは見事な富士山型です。2050年には人口が1億7000万人を超えると推定されており、それ以降も人口増加が続くとみられています。労働人口も世界でトップクラスであり、平均年齢は23歳と非常に若いのも特徴です。潜在的な不動産購入層となる若年層が数多いので、将来的な不動産価格の上昇も「普通に」期待できます。

 

日本では2025年ごろに社会が超高齢化する、いわゆる「2025年問題」が大きな課題としてクローズアップされていますが、そこで生じる人材不足を補うための労働力としても、フィリピンには高い期待が寄せられています。フィリピン人は国民の9割以上が英語を話し、英語人口はアメリカ、イギリスに続く世界第3位ともいわれています。英語でのスムーズなコミュニケーションが可能なフィリピンの人材は世界的にも人気で、アメリカをはじめとした先進諸国も本気でその人材の確保に乗り出しています。そうした、人材大国としての一面もフィリピンは備えているのです。

 

昨今、多くの外資系企業がバックオフィスのコスト抑制を目的として、フィリピンにコールセンターを開設したり、現地企業に関連業務を丸ごとアウトソーシングしたりする動きが加速しているのも、見逃せない動きでしょう。いま、フィリピンは世界屈指のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業国となっています。そして日本企業も、そうしたアウトソーシングを加速しているだけなく、現地にビジネス拠点を設置するなど、東南アジアにおける最重要国となりつつあるフィリピンに改めて本格進出しようとしています。

出稼ぎ人材からの外貨送金額がGDPの8.4%にも相当

成長著しいフィリピン経済ですが、それを支える要因として、フィリピンの通貨「ペソ」の独特の“強さ”も見逃せません。実はフィリピンは、先進国や中国といった海外主要国の景気に影響されにくい「ディフェンシブ国」と評されています。フィリピンの成長を支えているのは、盛んな個人消費。つまり、拡大するばかりの内需による側面が強いのです。

 

ハロハロホーム ファウンダー 鈴木 廣政 氏
ハロハロホーム ファウンダー 鈴木 廣政 氏

そうしたフィリピン経済を語るうえで欠かせない視点が「OFW」でしょう。「Oversea Filipino Worker」の略称なのですが、これは海外に出稼ぎに出ているフィリピン人のことを指しています。OFWは、1975年の段階では年間3万6000人ほどでしたが、2013年にには224万人にまで増加しています。ここ40年ほどで60倍にも膨れ上がっているわけです。

 

そしてOFWは、海外で働くことで得た賃金を粛々とフィリピンに送金し続けています。その額は、1975年で1億米ドルほどでしたが、2013年には約229億米ドルに達しました。これは同年のフィリピンのGDPの実に8.4%にも相当する規模なのです。GDPの10%程度が外貨によるもので、そんな国は、フィリピン以外に存在していないでしょう。

 

海外の情勢や景気動向に左右されることなく、ひとりひとりの出稼ぎ労働者が、定期的に送金してくる――。「塵も積もれば」ではありませんが、そうした細々とした外貨送金が、自国通貨を買い支えているような状況は、極めてユニークな経済構造といえます。実際、フィリピン・ペソはアジア通貨危機のときにもっとも早く立ち直りました。それも、フィリピン・ペソの底力を端的に示している一例ではないでしょうか。

 

それに加えて、最近のフィリピン経済においては「ドゥテルテノミクス」にも耳目が集まっています。フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領が掲げた、インフラ開発を主軸にすえた経済政策で、2017年からの3年間、鉄道網の整備といった公共インフラの改善に7兆9000億円を投入するというものです。雇用の創出、格差解消に取り組み、最終的には7~8%の経済成長を目指すとされています。そして、2022年までには上位中所得国への転換を果たすという、非常に意欲的な施策です。

 

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まだまだ概略程度ではありますが、フィリピンのポテンシャルの高さを簡単に整理しただけでも、これだけの点が挙げられます。今後も大きな成長が期待できるフィリピン。投資対象として、今後の動向に注目しておくべき国ではないでしょうか。

取材・文/漆原 直行 撮影/永井 浩 
※本インタビューは、2017年6月2日に収録したものです。