現役時代に高年収を得て、十分な年金や退職金を用意できた人でも、老後の家計が安泰とは限りません。予期せぬ体調変化や介護の負担が重なれば、思い描いていた安心の設計はあっけなく崩れ去ってしまいます。元エリート家庭を襲った突然の資金ショートの要因とは何か。高齢期の家計に潜む落とし穴と、家族の備えを考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「年金月30万円もあるのに…」元大手部長の76歳父、食卓に並んだカップ麺…帰省した48歳長男が知った「貯金残高100万円以下」の理由 ※写真はイメージです/PIXTA

医療費と介護費に加え、日々の生活費も家計を圧迫

清さんの家計では、病気と介護が重なり、それにより生活費も増えたことが大きな負担になっていました。医療費には高額療養費制度があり、年齢や所得などに応じた自己負担限度額が設けられています。ただし、実際の負担額は所得区分や治療内容などによって異なります。また、入院時の食事代や差額ベッド代など、制度の対象にならない費用もあります。

 

介護についても、サービス利用時の自己負担は所得などに応じて1〜3割です。さらに、ショートステイなどでは、介護サービスの自己負担とは別に食費や滞在費がかかります。高額介護サービス費によって介護サービスの自己負担が一定額を超えた場合に軽減される仕組みもありますが、食費や居住費など、対象外の費用もあります。

 

まさか同じタイミングで病気や介護という話になると思っておらず、現役時代の金銭感覚で定年後しばらくは暮らしていた――貯金残高100万円以下に陥った元凶です。

 

「私たちに貧困なんて遠い国の話だと思っていました。それが差し迫っているという危機感でいっぱいです」

 

親の預貯金が減っていると分かってから、初めて家計の実態を知る家族も少なくないはずです。年金額や退職金の金額だけでは、老後の生活がどれだけ安定しているかは判断できません。病気や介護が必要になったときに備え、親が元気なうちから毎月の収支や保険料、医療・介護サービスの利用料を確認しておくことが大切です。