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「年金月30万円」の父が直面した異変
半年ぶりに地方の実家を訪ねた、都内在住の会社員・松本大輔さん(48歳・仮名)。父の清さん(76歳・仮名)は、大手で部長職を務めた人物。現在は夫婦合わせて月30万円を超える年金をベースに暮らしています。
大輔さんは、両親の老後について金銭的な心配をしたことがありませんでした。勤めていたのは名の知れた有名企業で、現役時代の給与額も想像がつきます。使っていない部屋の電気は消すなど、常識的なことはするものの、特別節約をしているのを見たこともありませんでした。
好きなものを食べ、好きなものを買い、好きなところに行く――そんな、悠々自適な老後を送っていたのです。
しかし状況は一変。久しぶりに実家を訪れた大輔さんが玄関を開けると、室内は薄暗く、暖房もついていません。居間では、厚着をした清さんがカップ麺を食べていました。明らかに節約をしている様子でした。そしてテーブルには汁が残るカップ麺や弁当の空き箱も。自炊をしていないことは一目瞭然でした。
「最近はちゃんと食べてないの?」と聞くと、「料理は苦手だからな」と清さん。食事は外食で済ませたり、出来合いのものを買ってきたりしているようで、余計に出費がかさんでしまいます。
「病院代も介護のお金も、毎月払っていくのがやっとだ」
大輔さんが預金通帳を見せてもらうと、残高は100万円以下。想像以上の少なさに、大輔さんは言葉を失ってしまったといいます。
定年時には2,000万円近い貯蓄額が記載されていました。大手企業の部長だったとはいえ、転職を繰り返した末のことだったので、退職金はスズメの涙ほどだったようです。それでも元大手部長という肩書にもかかわらず、貯金が100万円を切っている――。
きっかけは病気と介護。清さんは数年前に前立腺がんと診断され、定期的な通院治療を続けています。妻の幸子さん(74歳・仮名)も認知症と診断され、デイサービスやショートステイを利用するようになりました。妻が料理を作ることができなくなると、基本的に自炊は難しくなり、食費は倍以上に跳ね上がったといいます。
「年金だけではとても足りず、取り崩していったら、このざまです」
厚生労働省『2025(令和7)年国民生活基礎調査の概況』によると、高齢者世帯の総所得に占める公的年金・恩給の割合は61.3%で、生活意識が「苦しい」(「大変苦しい」21.0%、「やや苦しい」31.1%)と回答した世帯は52.1%に達します。
また65歳以上の41.3%で貯蓄が減っており、年金や退職金があっても、夫婦双方の医療や介護が重なれば家計が急速に困窮するリスクは決して他人事ではありません。