物価高が続くなか、限られた年金で暮らす高齢者にとって、日々の食費を抑えることは切実な生活防衛策です。しかし、過度な節約は生活の潤いだけでなく健康をも脅かしかねません。わずかな出費にも頭を悩ませる厳しい家計の現実とはどのようなものか。高齢単身世帯の食卓から、老後の経済的困窮と生活防衛の課題を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「はぁ、なんて美味…」〈年金月10万円・78歳ひとり暮らし〉普段は「具なしソバ」だが、2ヵ月に一度の贅沢「月見ソバ」から見える年金生活の厳しさ ※写真はイメージです/PIXTA

年金月10万円、78歳男性の食卓

東京都内の古いアパートでひとり暮らしをする佐藤博さん(78歳・仮名)。個人事業主として長い間働いていましたが、50代で会社を畳み、以降は町工場で働いてきました。60代後半まで仕事を続けましたが、体力の衰えから退職。現在の収入は、月約10万円の年金です。妻とは10年以上前に死別し、子どもはいません。

 

住まいは家賃3万円台の賃貸住宅。年金から家賃を支払い、光熱費や通信費、医療費などを差し引くと、食費に回せるお金は限られます。

 

「景気のいいときは好きなときに好きなものを食べていました。でも、今はそうはいきません。いつでも価格優先です」

 

現役時代にコツコツと続けた貯金は、残り300万円ほど。できるだけ取り崩さない生活を心がけています。そのため、あらゆる場面で節約に励んでいるのだとか。

 

「家にいると光熱費がかかるので、できるだけお金がかからないところで過ごすようにしています。図書館とか、役場とか、病院とか。食事するときだけ帰ります。外食はここ何年もしていませんね」

 

毎食、自炊します。出来合いのものはよほどのことがない限り買いません。

 

「水道代やガス代を考えても、何だかんだ言って作ったほうが安いから」

 

博さんはスーパーに行くと、値引きされた見切り品を中心に選びます。肉や魚はほとんど買いません。タンパク質は納豆や豆腐を中心に。野菜も価格を確かめ安いものを選びます。そんな博さんの好物は「ソバ」。

 

「ソバは腹持ちが悪いですから、2束いきたいんですが……我慢です」

 

一袋5束で198円。週に3〜4回ほど食べるといいますが、基本的に「めんつゆに麺」、以上。具は入れません。

 

「本当は卵でも落としたい。月見ソバが一番好き。でも最近は特に高いでしょ。この前なんて10個で300円超えていたから、そうそう手が出ません」