安心な老後を夢見て選んだシニア向け分譲マンション。「所有権があれば安心」「いつでも売れる」という思い込みには、思わぬ落とし穴が潜んでいます。手厚いサービスや設備に魅力を感じて購入したはずの住まいで、なぜ売却すら困難な事態に陥ってしまうのか。高齢期の住み替えに潜むリスクと、物件選びの注意点を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「売りたいときに売れるはずじゃ…」〈年金手取り月24万円・貯金5,000万円〉60代夫婦、〈4,000万円・シニア向けマンション〉を現金一括購入も…3年後、売りたくても売れない現実 ※写真はイメージです/PIXTA

「所有権があるのに…」売却相談で告げられた厳しい現実

「自分の持ち物なのだから、売れば済むと思っていたんです」

 

修さんが想定していたのは、購入価格に近い金額で売却し、次の住まいの購入資金に充てることでした。しかし、不動産会社から指摘されたのは、買い手にとって月額13万円の維持費が大きな負担になるという点でした。

 

一般的なマンションと比べ、レストランや大浴場、コンシェルジュなどのサービスが充実している分、維持費も高くなります。こうしたサービスを必要とする人にとっては魅力でも、費用を抑えたい購入希望者には敬遠される可能性があります。購入者の年齢や入居条件が定められている物件なら、買い手の候補も限られます。

 

不動産会社からは、購入時と同程度の価格で売却できるとは限らず、価格を下げて買い手を探す必要があると説明されました。4,000万円で購入した住まいを安く売れば、次の住まいに充てる資金も減ってしまいます。一方、売却できるまでは、月額13万円の維持費を払い続けなければなりません。

 

国土交通省の前出の調査では、マンションの世帯主のうち70歳以上が占める割合は25.9%でした。高齢期の住まいとしてマンションを選ぶ人がいる一方、長く住み続けるためには、建物の管理や費用負担を継続できるかどうかも重要になります。

 

「所有権があるから安心だと思っていました。でも、売りたいときに希望する価格で売れるとは限らないんですね」

 

修さん夫婦は、売却価格を見直しながら買い手を探すことになりました。

 

内閣府『令和5年度高齢社会対策総合調査』によると、高齢者の約3割が住み替え意向を持ち、理由として「健康・体力面での不安(24.8%)」や「住宅の住みにくさ(18.9%)」が上位を占めます。一方で、住宅の問題点として「住宅維持費等の経済的負担が重い」と挙げる人も15.5%います。

 

シニア向け物件選びでは、設備の充実度だけでなく、将来の維持費値上げや売却時の需要リスクまで見据えた長期的な資金計画が不可欠です。