住宅価格の高騰を背景に、共働き夫婦がそれぞれ住宅ローンを組む「ペアローン」が注目されています。夫婦の収入を活用すれば、より高額な住宅を購入でき、住宅ローン控除などのメリットもあります。しかし、注意すべきなのは借り過ぎだけではありません。離婚や相続などをきっかけに、自宅の共有持分が第三者に渡る可能性もあります。実際の20代夫婦の住宅購入相談をもとに、現役大家CFPの竹下昌成氏がペアローンのメリットと見落としがちなリスクを解説します。
夫婦で購入した家を、どちらかが「自分の持ち分だけ売却」したら…?借りすぎのリスクだけではない〈ペアローン〉の意外な落とし穴【現役大家CFPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦の一方が「自分の持ち分だけ」を売却したら?

ペアローンでは、夫婦それぞれが住宅の所有権を持つのが一般的です。


例えば、夫婦が2分の1ずつ所有するマンション。何らかの事情で夫婦関係が悪化し、夫が自分の持ち分だけを第三者に売却したら、どうなるでしょうか。実は、不動産全体を売却するには原則として共有者全員の同意が必要ですが、自分の持ち分だけなら、相手の同意なく売却できます。


では、マンションの持ち分だけを購入するのは、どんな人でしょうか。普通のマイホーム購入者ではありません。共有持分の買取を専門とする不動産業者などです。こうした業者は、持ち分を取得した後、残された共有者に買取を求めたり、共有物分割を請求したりすることがあります。協議がまとまらなければ裁判となり、最終的には不動産全体の競売が命じられる可能性もあります。


つまり、妻が自分の住宅ローンをきちんと返済し、マンションに住み続けていても、ある日、見知らぬ不動産会社が自宅の共有者になる可能性があるのです。


もちろん、持ち分を購入した業者が、直ちに住んでいる人を追い出せるわけではありません。また、住宅ローンの抵当権が設定されている場合には、金融機関との契約上の制約もあります。それでも、共有持分が第三者に渡れば、残された共有者はその相手と不動産の権利関係を調整しなければなりません。


この問題は、ペアローンだけでなく、夫婦共有名義の不動産全般に共通するリスクです。私は、不動産は可能な限り単独所有を基本に考えています。

住宅ローンは「いくら借りられるか」より「どう暮らすか」

もちろん、ペアローンそのものを否定するわけではありません。夫婦ともに安定した収入があり、十分な貯蓄や収入減少への備えができているなら、合理的な選択になる場合もあります。


ただし、住宅購入の予算は、夫婦の年収を単純に足し算して決めるものではありません。基本は、主な家計負担者の収入を中心に、無理なく返済できる資金計画を立てることです。どうしても欲しい家があるなら、借入額を増やすだけでなく、収入を増やす方法や購入時期の見直しも考えたいところです。


また、夫婦で住宅ローンを組む場合には、ペアローンだけでなく連帯債務型なども比較し、団信や住宅ローン控除、所有権の持ち分について確認する必要があります。特に共有名義にするなら、離婚や相続が発生した場合にどうするか、事前に話し合っておくことが重要です。


今回の20代夫婦は、ペアローンで借入可能額を増やすことは選びませんでした。一方で、当初予算の3,000万円を超える4,200万円のマンションを購入しています。住宅ローンの返済負担、生活の余裕、物件の価値などを比較したうえでの判断です。


住宅購入は、何十年にもわたる生活の基盤を決めるものです。夫婦仲が良いときに、離婚や相続のことまで考えるのは気が進まないかもしれません。しかし、住宅ローンは30年、40年と続きます。


今の夫婦関係だけでなく、将来の生活や権利関係まで考えて、住宅ローンと所有形態を選んでほしいと思います。

 

 

竹下 昌成

竹下FP事務所 代表

日本FP協会認定CFP・TAC講師