(※写真はイメージです/PIXTA)
定年後の労働市場
企業の多くは高年齢者雇用安定法に基づき65歳までの雇用機会を確保していますが、定年後の再雇用においては職務内容の見直しに伴い、現役時代の4割から6割程度まで年収が減少するケースが一般的です。厚生労働省『令和6年(2024年)高年齢者雇用状況等集計結果』によると、60歳定年企業における継続雇用制度の導入割合は9割を超えているものの、労働条件の引き下げに対する納得感の醸成は多くのシニア労働者にとって課題となっています。
また、外部の労働市場において60歳以上の求職者が現役時代と同等の年収や役職を得ることは極めて困難です。リクルートワークス研究所『シニア世代の就労実態調査2024』のデータにおいても、60代前半で社外への転職を果たした層の多くが「前職より年収が低下した」と回答しており、他社での高待遇を前提とした退職はリスクを伴うことが示されています。
高齢期の家計収支を公的データから見ると、無収入期間の長期化がどれほど老後資金を圧迫するかがわかります。総務省統計局『家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯における月平均の消費支出は26万3,979円、非消費支出(税・社会保険料)を含めた実支出合計は29万6,830円に達します。今後も物価高が続くことを予想すると、支出額は増える可能性も高いです。
年金受給が始まる前の60代前半において完全に無収入となった場合、毎月30万円近くの生活費に加えて、前年の所得に応じた個人負担の住民税や国民健康保険料が重くのしかかります。仮に退職金が2,200万円あったとしても、5年間の無収入期間で1,500万〜1,800万円近くを取り崩すことになれば、65歳以降の老後資金形成に大きな支障をきたすことになるでしょう。
定年後の働き方を考えるうえでは、単に現役時代との給与比較で提示条件を判断するのではなく、退職後の税・社会保険料負担や老後資金の取り崩しペースを総合的に試算することが欠かせません。自身の市場価値を冷徹に見つめ直し、安定した収入源を確保しながら無理のない形で軟着陸を目指す視点が重要となります。
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