会社員人生も50代に差しかかると、定年までの働き方や家族との生活を具体的に考えるようになります。これまでの実績や経験を踏まえ、社内での立ち居振る舞いを考えることもあるでしょう。しかし、想定通りにいかないのがサラリーマン。ある男性の事例から、50代のキャリアについて考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
うっ、うそだろ…〈年収850万円・54歳課長〉、月曜朝一の呼び出しで告げられた「予想外の辞令」 ※写真はイメージです/PIXTA

50代の転勤はキャリアの集大成か、それとも想定外の負担か

高橋さんは、辞令を受けたその日の夜、妻に電話で事情を説明しました。

 

「転勤? 今度はどこ? いつまで?」

 

妻から返ってきたのは、赴任先への期待ではなく、生活への不安でした。母親の通院をどうするのか。単身赴任なら、生活費はどれほど増えるのか。今回の転勤に際し、手当は以前よりも厚くなると聞いています。しかし単身赴任となれば、手当だけですべてを賄うことは難しいはずです。

 

また、転勤を受け入れた場合、定年後の再雇用やその後の役割がどうなるのかも気になりました。今回の異動は、会社が自分に何を期待しているのかを知る機会でもあります。単に勤務地を変えるだけなのか、事業所の立て直しを通じて管理職としての経験を生かしてほしいのか。その違いは、今後の働き方を考えるうえで重要です。

 

「これまで会社の方針に従ってきました。でも、残りの会社員生活をどう過ごすかは、自分でも考えなければいけないと思いました」

 

高橋さんは、上司との面談を改めて申し込みました。赴任期間の見通しや、現地で求められる具体的な成果、定年後のキャリアについて確認するためです。長ければ、赴任先で定年を迎えるかもしれない。その後、再雇用の際には本社勤務となることが明らかになり、高橋さんは単身赴任での転勤を決めたといいます。

 

「どうしても転勤が断れないなら、転職という選択肢もある。でも50代の私には現実ではなく、受け入れるしかありませんでした」

 

人事院『民間企業の勤務条件制度等調査』によると、転居を伴う転勤が「ある」企業の割合は全体の42.6%。特に企業規模が大きくなるほどその傾向は顕著で、従業員500人以上の企業では79.2%と8割近くに達します。

 

50代での転勤は、これまでの実績や経験を買われたキャリアの集大成である一方、住宅ローンや家族の介護、定年後の働き方など、ライフスタイルと直結する大きな負担となりやすいのが現実です。会社側の期待と個人の生活設計との間で、どのように折り合いをつけるかが重要なテーマとなっています。