孫は目に入れても痛くないとはよく言ったもの。実際に可愛さのあまり、過剰にサポートしてしまうケースも珍しくありません。しかし、自身の老後にまで影響を与えてしまっては話は別です。ある親子の事例を通して、子や孫へのサポートの在り方を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「もう無理です…」〈年金月27万円・76歳夫婦〉、50歳息子に「孫の養育費・月5万円の援助の終わり」を告げた日 ※写真はイメージです/PIXTA

「孫のためだから」毎月5万円を渡し続けた76歳夫婦

「養育費を払うと、生活費が足りないんだ。少し助けてもらえないかな」

 

長男の大輔さん(50歳・仮名)からそう頼まれた、佐藤博さん(76歳・仮名)と妻の節子さん(75歳・仮名)。妻と離婚し、一人息子の養育費を毎月支払うことになった長男ですが、自分の生活費も必要です。月5万円を払うことは難しく、両親に経済的な援助を求めてきたのです。

 

博さん夫婦の収入は、夫婦合わせて月27万円ほどの老齢年金のみ。手取りにすると月23万円弱です。持ち家で暮らしているものの、固定資産税や住宅の修繕費の積立分も考えると、毎月の生活費はトントンでした。それでも、孫のことを考えると、息子の頼みを断る気にはなれませんでした。

 

「孫には何の責任もありませんから。養育費が払えなくなって困るのは、結局、子どもでしょう」

 

そう考えた博さん夫婦は、毎月5万円を援助することにしました。息子が養育費を支払えるようにするためです。

 

しかし、一度始めた援助は、いつしか当たり前のようになっていきました。毎月5万円は年間60万円。3年続けば180万円になります。

 

長男は会社員として働いています。それでも、離婚後の生活費や養育費の負担が重いと訴え、両親からの援助を頼りにするようになりました。博さん夫婦も、孫のためだと思えば、簡単には断れません。

 

ところが、夫婦自身の生活にも変化が出てきます。年齢を重ねるにつれ、通院や薬にかかる費用が増えました。自宅の設備にも不具合が見つかり、修繕を検討しなければならなくなったのです。

 

節子さんは家計を見直しました。節約できるところはないか――必死で探しました。一方で、「なぜ自分たちがここまで頑張らないといけないのか」という思いもふつふつと湧き上がってきたといいます。

 

総務省の「家計調査」によると、2025年の65歳以上の夫婦のみの無職世帯は、実収入が月平均25万4,395円、可処分所得が22万1,544円。一方、消費支出は26万3,979円で、可処分所得を月平均4万2,434円上回っています。平均的な世帯であれば、月4万円、年間50万円ほど、貯蓄から取り崩すことが前提となります。

 

博さん夫婦も、息子への援助を続ければ、自分たちの将来に必要な資金が減っていきます。孫を思う気持ちと、老後の生活を守らなければならない現実。その両方を考えた末、夫婦は長男と話し合うことにしました。