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「もう転勤はないはずだった」本社勤務の54歳課長を襲った辞令
「うっ、うそだろ……」
月曜日の朝。大手メーカーで営業課長を務める高橋剛さん(54歳・仮名)は、直属の上司に呼び出され、会議室で告げられた人事異動の内容に言葉を失ったといいます。
「来月から、東北支店に行ってもらいたい」
高橋さんは入社以来、営業畑を歩んできました。30代で初めて地方支店に赴任し、その後も関西、九州と転勤を経験。数年前に本社へ戻り、現在は年収850万円の課長として働いています。
地方勤務のたびに、妻や子どもとの生活を調整してきました。単身赴任を選んだ時期もあれば、家族と一緒に引っ越した時期もあります。
ようやく本社での仕事に慣れ、子どもも独立。妻との生活も落ち着きました。50代になり、もう遠方への転勤はないだろうと考え、東京の郊外に戸建ても購入しました。
「これまで何度も異動してきました。今度こそ、本社で定年を迎えられると思っていたんです」
高橋さんが驚いたのは、転勤そのものだけではありません。今回の赴任先は、これまで経験してきた支店とは事情が異なっていました。業績が伸び悩む拠点で、営業体制の立て直しを任されるというのです。
上司は「これまでの経験を生かしてほしい」と説明しました。しかし、高橋さんには素直に喜べない理由がありました。
妻は持病のある母親の通院を手伝うようになっていました。住宅ローンの返済もあります。定年後を見据えて、家族と過ごす時間を増やしたいと思っていました。
「会社から必要とされているのはありがたい。でも、54歳になって、また生活を大きく変えなければならないのは、負担が大きすぎる……」