老後資金として夫婦で2,000万円は必要――。よく耳にする言葉ですが、あくまでも一般論でしかありません。「老後は3,000万円以上必要」と試算したある男性の事例から、老後資金の考え方について見ていきます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「老後資金は2,000万円必要」に疑問を抱く59歳男性、夫婦の老後資金を試算…年金だけで暮らせるはずが「3,000万円でも足りない」 ※写真はイメージです/PIXTA

突発的な支出も考慮すると…

その日の帰宅後、誠さん夫婦は年金の見込み額と退職後の支出を確認しました。ねんきん定期便などを参考に、65歳以降の夫婦の年金収入を見積もります。さらに、食費や光熱費、通信費、保険料、医療費、交際費など、毎月の支出も洗い出しました。

 

「ねんきん定期便通りだと、65歳から受け取れる年金額は私が月18万円、2歳年下の妻が月12万円でした」

 

実際の手取り額は額面の85〜90%と言われています。そこで誠さん夫婦は月25万円の年金収入があると仮定。そして現在の支出は3カ月平均月20万円弱。単純計算すると、月5万円ほど年金から貯蓄に回せそうな見通しになったといいます。

 

「普段から私たち夫婦は、派手な支出をしていないので。年金だけで十分暮らしていけそうなことがわかり、随分と心が軽くなりました」

 

昨今「2,000万円不足」という言葉が一人歩きしていますが、不安になる必要はない――一方で突発的な支出もあるでしょう。物価上昇や医療・介護費の増加、住宅の修繕費などは別途考慮する必要があります。

 

「これから家全体をフルリフォームして、さらにお互いに施設に入居することを考えました。仮に介護付き有料老人ホームに5年入居するとなると、試算では3,000万円くらいになって……」

 

もちろん、貯蓄に回せると見込まれる年金を考慮すると、そこまで貯蓄は必要ではないかもしれません。フルリフォームすることも、介護施設に入居することもないかもしれません。ただ起こり得ることを考慮すると、とても2,000万円では足りず、試算上、3,000万円でも足りないかもしれない――と、かえって不安が大きくなる結果になりました。

 

「あくまでも“備え”ではありますが……お金はあるにこしたことはない、という結論になりました。これからも派手なことはせず、コツコツとお金を貯めていこうと思います」

 

厚生労働省『2025(令和7)年国民生活基礎調査』によると、65歳以上の高齢者世帯の1世帯当たり平均貯蓄額は1,700万7,000円。一方で、前年より「貯蓄が減った」高齢者世帯は41.3%に上り、その理由の80.8%を「日常の生活費への支出」が占めています。

 

所得の61.3%を公的年金に依存するなか、生活維持や突発的な出費に備えて着実に貯蓄を進める姿勢は、不確定な老後リスクから自分たちの暮らしを守る現実的な防衛策といえそうです。